【完】俺の隣にいてほしい。

「学ラン? あるよ。中学の時のなら」


「えっ、ほんと? それじゃあよかったら、貸してもらってもいいかな?」


「いいよ、全然。俺のでよければ使って」


帰り道、さっそく椿くんに学ランを借りられるか尋ねたら、椿くんは快くOKしてくれた。


中学時代の制服がまだ家に残ってるみたい。


「学祭の劇で使うんだっけ?」


「うん、そうみたい。演劇部の子たちに頼まれたんだ。うちの学校女子しかいないから」


「なるほどな。たしかに、学ランは兄弟でもいないと持ってねぇよな」


「そうなの。だから、椿くんに貸してもらえるの、すごく助かる。ありがとう」


笑顔でお礼を言ったら、一瞬目を見開いて、こちらをじっと見てくる彼。


そして、何か考えたように数秒黙り込んだかと思うと、次の瞬間。


「……じゃあ、今から俺ん家来る?」


思いがけないことを言われて、ドキッと心臓が跳ねた。


「えっ?」