海からの帰り、椿くんは再び私を自転車の後ろに乗せると、そのまま私の家まで送ってくれた。


自転車を降りて、家の門の前で椿くんと向かい合う。


「心音の家って、ここ?」


「うん」


「さすが。すげー立派なとこ住んでんだな」


「そ、そんなことないよっ。」


「もう夜だけど、親心配してねぇか?」


椿くんはさっきから、何かと時間を気にしてくれる。


「大丈夫。さっき遅くなるって連絡したから。わざわざおくってくれてありがとう」


「いや、当然だろ。でないと俺が心配だし。それじゃまたな」


少し名残惜しい気持ちのまま、椿くんに手を振る。


「うん、またね」


すると彼は、私の頭の上にポンと右手をのせて。


「おやすみ、心音」


そのままポンポンと撫でてきたので、またしても心臓がドキンと音を立てた。


「おやすみ」