【完】俺の隣にいてほしい。

ポカンとした顔で椿くんを見上げると、なぜか急に目線を横にそらす彼。


「あ、いや、なんでもない」


今、たしか、変わってないって言ったよね? どういう意味なんだろう……。


少し気になったけれど、なんとなくそれ以上聞き返すことができなかった。


「ありがとな」


椿くんに笑顔でお礼を言われて、はにかみながら答える。


「どういたしまして」


「つーか、結構時間経ったけど、今何時だ?」


「えっと、もうすぐ六時半だよ」


「マジか。心音、時間大丈夫?」


そう聞かれて、確かにそろそろ帰らないとお母さんに心配されるかも、なんて思う。


でも、なんだろう。もう少しこのままここで椿くんと一緒に海を見ていたかったなぁ、なんて。


「えーと、うん。もう少ししたら、帰ろうかなぁ」


私が答えると、椿くんが目の前の海を見つめながら呟く。


「なんかもう、このまま帰りたくねぇな」


えっ……。