【完】俺の隣にいてほしい。

「俺、バイト終わりによくここに一人で来るんだよ。ここで海眺めてボーっとしてる」


「そうなんだ」


「俺のお気に入りの場所」


そう言ってほほ笑む椿くんの顔が、夕日に照らされて、ますますキラキラして見える。


思わず胸の奥がきゅうっと締め付けられて、なんともいえない感情が込み上げてきた。


椿くんはわざわざ私にこの景色を見せるためにここに連れてきてくれたんだ。


なんか、嬉しいな。


椿くんのお気に入りの場所を教えてもらえるなんて。


なんだかちょっと彼の特別になれたような気分だ。


「素敵だね。ずっと見ていたくなる」


そう言って、うっとりとした表情で目の前に広がる景色を眺める私。


そのまま椿くんと二人並んで、しばらく無言のままボーっと海の向こうを見ていた。


ザアザアと波音が聞こえてきて、心まで洗われていくような気持ちになる。


このままずっと、こうしていられたらいいのに。


そんなことを頭で考えてしまった。