それを聞いた椿くんは、目を見開きハッとした顔をする。


どこか衝撃を受けたかのようなその顔を見た途端、なんだかすごくまずいことを言ってしまったような、そんな気持ちになった。


あぁ、どうしよう。私ったら、何を正直に……。


椿くんは、私のことを助けてくれたんだよ。それなのに、なんで咎めるようなことを言ってるの。


彼はそのまま固まったように、数秒間黙り込む。


だけど次の瞬間、小さな声で呟いた。


「……ごめん」


うつむいたまま、反省したように呟く彼を見て、思わずズキンと胸が痛む。


やだ私、余計なことを言っちゃったかな。


「そうだよな。怖かったよな。俺、心音が突き飛ばされてんの見たら、許せなくてつい……。悪かった」


えっ? 突き飛ばされた?


そこで彼の口から飛び出してきた発言に、驚く私。


ちょっと待って。それじゃもしかして、椿くんはさっき私が転んだのを勘違いして……。


「あ、いやっ、今のは私、突き飛ばされたんじゃなくて……! ナンパされて、店の中に連れ込れていかれそうになったから逃げようとしたら、私が勝手に段差につまずいてこけちゃっただけなの」


「えっ、マジかよ」


「う、うん。実は……」


「……そっか、ごめん。俺、てっきりあいつらに突き飛ばされたのかと思ってた」