【完】俺の隣にいてほしい。

殴られた男の子は、痛そうに頬を押さえながらよろよろとその場に立ち上がる。


すると、そんな彼の元へと椿くんが再び近寄っていって、相手を思いきり睨みつけた。


「今この子に何したんだって聞いてんだよ」


低い声で問いただす彼。


その目つきがあまりにも鋭くて、思わずビクッと肩が震える。


こんな怖い表情をしている椿くん、初めて見た。


これは今、私が絡まれてたから、だから怒ってくれたんだよね?


でもまさか、殴ったりするなんて……。


いつもはすごく温厚で優しい彼だけど、怒ったらやっぱりすごく怖いのかな。


「な、何だよっ。ちょっと声かけただけだろ。なんもしてねぇよ」


詰め寄られたイラついたように返すと、ますます眉間にシワを寄せる椿くん。


「ウソつけ! だって今……」


「あーもう、うるせぇな。なんでいきなり見ず知らずの奴に殴られなきゃいけねぇんだよっ!」


すると、その男の子はすかさず右手を振り上げ、やり返すかのように椿くんに殴りかかってきて。


これはまずいと思い、反射的に目をふさごうとしたら、その瞬間椿くんはガシッと相手の手首を片手で受け止めた。


そしてそのまま無表情で手首をひねり上げる。