【完】俺の隣にいてほしい。

そう言われて初めて、ナンパされたことに気が付く。


どうしよう。まさかこんなところで声をかけられるなんて。


「えっ、でも、私、人と待ち合わせをしてて……」


「待ち合わせ？　そうなんだー。友達と？」


「……は、はい」


思わずうなずいてしまったあとで、実は彼氏って答えればよかったんじゃないかということに今さらのように気が付いたけれど、時すでに遅しで。


彼らはその友達を女の子だと思ったのか、私の腕を掴むと、そのまま無理矢理店の中へと連れて行こうとした。


「それじゃ、そのお友達も一緒にお茶すればいいじゃん！　行こうぜ」


「えっ、ちょっと！」


「ほらほら～、そんな顔すんなって。おごってやるからさぁ」


「い、いやっ……。離してっ」


強引に腕を引っ張る彼らに必死で抵抗する。


さすがにこのまま中に連れ込まれてしまったら、椿くんになんて言えばいいかわからないし、断らなくちゃ。


なんとかして腕を振り切ったところで、男が言う。


「おいおい、ちょっと一緒に話すだけなんだからいいだろ～？」


「そうだよ。そんなにビビんなって」