塩素は駄目でも、海水ならそれなりに平気。波打ち際で裸足になった私に井ノ上くんも付き合ってくれて共にはしゃぐ。心ゆくまで楽しんだあと、道路に上がる階段の途中に座るよう促され、持参してくれていたペットボトルに入ったお水で足を洗おうとしてれる。


「井ノ上くんっ」


「海水平気でも、すぐ洗うほうが負担ないっしょ」


有無を言わさぬ手つきで砂を洗い流された。タオルで拭かれる場面になり、ようやく意見が通った私は、羞恥心が最高潮に達し、井ノ上くんから顔を背けて自分で水分を拭いとった。


「さすがに夏フェスは無理だけど」


オレ音痴なんだよね、とリサイタルでも開催しようとしていたのか照れながら、お弁当箱を井ノ上くんはリュックから取り出す。


「炭も上手くおこせないんだ」


バーベキューの代わりだと、お弁当箱の中にはぎゅうぎゅうに詰まった牛カルビがあって。因みにご飯は入っていなかった。牛カルビオンリー。


朝から女子高生にたっぷりの肉なんてどうかとも思ったけど、楽しくなってスイカ腹なんて何処吹く風、二人で平らげてしまった。