「汗、凄いよ」


持っていなかったみたいなので、その日は使わなかった私のタオルを貸してあげると、一年後輩にしてはまだ幼さ残る顔が綻び、なんだか和んでしまった。


「職員室以外でも涼しいとこあるんだねー」


「指導室とか保健室もだよ」


「なんだそれっ。オレ行かないとこばっかだ!」


何故かウケている井ノ上くんに、エアコンこそないものの、風がよく通る涼しい場所も校内にはたくさんあるのだと幾つか教えてあげた。私の高校生活には必須項目なのだ。


最初こそ嬉しそうにしていたのが、どうやら脳筋男だったらしい井ノ上くんは次第に覚えきれなくなり、覚えたものまで頭から抜けていき……けど、そういう憩いをなんだかものすごく欲しがってしまった井ノ上くんは、とりあえず私のいる場所がそういう所なのだという結論に至り、以来、よく纏わりついてくるようになる。
エアコンの効いた図書室で、校舎と校舎の間にある日陰のベンチで、他にも色々。