「千穂、その指どうした?」


新人にそう言われ、あたしはハンカチで指先をぬぐった。


小さな傷だからどうってことはない。


「あたしさっきから考えてたの。この現象がなんなのか……」


「なにかわかったのか?」


「ただの憶測なんだけど……風が人間の体を切りつけているんじゃないかなって、思うんだよね」


バカバカしい考えだと笑われるかもしれない。


だけど、今までの被害者は全員、風に当たっている。


「見て、今も隙間風が入って来てる」


幸い、隙間風の威力は弱くてすぐに消えてなくなる。


だから窓から遠い場所にいれば大丈夫そうだ。


「もしそれが本当なら、外へ出た方が危険ってことか」


新人はそう呟いて窓の外を眺めた。