《この《願い叶うチャット》は全国に数千万人の利用者がいる。


その中から《死にたい》と願う人間が最も多い地域を狙って、風の実験を開始するらしい。


でも、できるだけ小さくて人口の少ない町を選ぶとかって噂》


死にたい……。


あたしは教室内で死んでいた女子生徒を思い出していた。


彼女は《願い叶うアプリ》に《死にたい》と書き込んでいた。


「これが本当だとしたら、千穂は悪くない」


新人があたしの手を握りしめてそう言った。


あたしは悪くない。


あたしは《いつもと違う日常が訪れますように》と願っただけだったから……。


気が付けば、頬に涙が流れていた。


ずっと、もしかしたらという恐怖が自分の中に巣くっていた。


それが一瞬にして消え去ってくれた気分だった。


「だけど、やっぱりアプリは関係あったんだね……」


この町に暮らす多くの人が《死にたい》と願っていた。