ピロン

『仕事終わるか?俺は、終わって医局出るところ。』

宮野先生からメールだ。

『私も、終わります』

『1階のロビーで待ってる。』

『着替えてすぐ行きますね』





「宮野先生、お待たせしました。」

「翔!」

「だって、まだ、病院です・・・」

「もう、仕事は終わった」

「し、翔。お疲れ様です。」

「お疲れ。綾、いやなら断ってくれていいんだけど、今から・・・」

何か、考えてるような表情の翔。

「どうしたんですか?」

「いや~ほんと、いやなら断ってくれていいんだけど。山形が4人で飯行こうって」

4人。ってことは、山形先生と向井さんかな?その二人の姿見ると私がつらいかもって思ってくれてるから、言いにくそうにしてるのかな。

「はい、行きましょう。大丈夫ですよ。翔も一緒に行ってくれるんですよね。隣にいてくれるんですよね」

「当たり前だろ。でも、ほんとに大丈夫か?」

「たぶん、大丈夫です。翔が、いてくれるなら」

うん。翔がいてくれれば、山形先生たちに「おめでとうございます」も、言えると思う。





2人で並んで病院を出て、居酒屋に向かう。



お店に着くと、山形先生と向井さんが仲良く飲んでいた。

「お~お疲れ」と、山形先生。

「お疲れ様です。宮野先生と・・・加藤先生?」

向井さんがびっくりした顔で私たち二人の顔を見比べて、山形先生の顔を覗き込んだ。

「あ~。このふたりはうまくいったんだよ。だぶんな」

「お前が言うな。俺の彼女。よろしくな」

「お、お疲れ様です。えっと、彼女?です?」

「綾ちゃん、なんで疑問形?彼女じゃないの?」

「えっと、彼女でいいんでしょうか?えっと、いいのかな?」

「彼女だろ!なんで、確認するんだよ」

「すみません・・・」



怒られた・・・だって、彼女って紹介されるとは思わなかったんだもん。



「じゃあ、知ってると思うけど、俺の彼女というか婚約者の向井なおさんです。」と山形先生。

「なおです。えっと、何言えばいいのかな?看護師です。えっと、山形先生と結婚することになりました?」

「おめでとう、ございます。向井さんってなおちゃんって名前だったんだね。なおちゃんって呼んでいいですか?かわいい名前ですね」

「ありがとうございます。加藤先生も綾さんって呼ばせてもらっていいですか?」

「もちろん、いいよ。」

「綾、大丈夫?何飲む?」



心配してくれる翔。ほんと、優しい。

翔がいてくれるから、山形先生となおちゃんの幸せそうな姿を見ても、仲良しだな~て、見てるくらい。



「大丈夫ですよ。私は、ビールにします。なおちゃんは、何飲んでるの?もしかしてノンアル?」

「あっ。えっと、妊婦なので・・・」

「そうだったね。ごめんね。つわりとか大丈夫なの?」

「はい、全然つわりなくって、食べれちゃって、太っちゃいそうです。」

「そっか、妊婦さんはいろいろ大変だろうけど、つわりがないならよかったね。でも、大事にしてね」

「はい、ありがとうございます」



なおちゃんは、話しやすくて、見かけ通りとてもかわいらしい子だった。

山形先生と隣にならんでると王子さまとお姫様だ。ほんと、かわいくて素敵な子だった。

とても、いい子で、話も面白くて、時々山形先生をのぞき込むしぐさがほんと、かわいい。

山形先生もかわいくてしょうがないって、溺愛ぶりでほんとお似合いの2人。

ほんと、幸せそうで、祝福したいを思った。