「こ…ここ、は…?」

声が…掠れる。

私は、死んだのだろうか?

ぼやけていた視界はどんどん明瞭になっていく。

私が見たのはあたかも王城のように豪華な天井だった。

「な…っ」

ここは、王城?

そんなはずはない。

王城にこんな装飾はなかったはず。

では…ここは?

まさか、誘拐?

ここは、どこか別の国の王城だとでも言うのか…?

いや…体の疲れ具合から見ても意識を失ってそこまでの時間は経っていないはずだ。

では…。

「ここは、どこ?」

誰に向けたつもりもないその言葉に対する返事は、案外すぐに返ってきた。

「お目覚めですか、聖女殿。」

「せ…聖女?」

視界に映り込むのは見目麗しき金髪の男性。

我が婚約者(彼は一応王子だ)に負けず劣らず絢爛豪華な格好をしている。

「あ、貴方は?ここは一体…。」

「戸惑うのも仕方ありません。ここはローデン王国。私は第一王子クルシェにございます。」

ローデン王国?

聞いたこともない。

いったい何処なのだ、ここは。

「あぁ。分からなくて当然です。ここは既に貴女の知る世界ではない。いわば異世界なのですから。」

「い、異世界…!?」

何をいっているのだろう、この金髪は。

そんなことがあるはずない。

「信じられないでしょうが本当です。ここは…この世界はアルティロスト。
貴女は聖女に選ばれたのです!さぁ、世界を救ってください!」