日の前に広がったのは、浅黄色だった。鈴は息を呑み、広がるその色を目に焼き付けていた。浅黄色の羽織を身にまとった青年が持っている刀が、闇鬼と呼ばれる化け物の攻撃から鈴を守っていた。


「大丈夫か??」


唖然と見上げたまま動けずいた鈴の肩を、もう一人の青年が掴んだ。こちらの青年も浅黄色の羽織を見の身にまとっている。


「あ、りがと、ございます」


か細く震える声で何とかお礼を言うと、青年は薄っすらと笑みを浮かべた。座り込む鈴に手を伸ばし立ち上がらせると、少しは離れた場所まで連れて行く。


「よいか、ここでジッとしていろ」


コクコクと必死で頷くと、青年はポンポンッと優しく鈴の頭をなで闇鬼と剣を交える青年の元へ走った。


建物の壁にもたれかかり、ズルズルと力なく崩れ落ちる。闇鬼と青年二人は数分間による激しい戦いは、闇鬼の敗北で終結した。


ギャァァァァと耳を塞ぎたくなる様な断末魔をあげ倒れる闇鬼から、鈴は目を逸らすことができなかった。ただ硬直したまま、まるで金縛りにあったようだ。


「なに、これ」


弱弱しい声は、不安と混乱が混じり。恐怖を訴えた鈴の瞳からは止め処なく涙があふれた。戦いを終えた青年二人はそんな鈴に駆け寄ってくる。


離れた場所まで、鈴を避難させた青年は何処か怪我でもしたのかと動揺をみせ、もう一人の青年はただジーッと鈴を見下ろしている。


「何で泣いてるの??」


「怪我でもしたのか??したのなら手当てを」


あたふたする青年に、違いますと鈴は首を振った。怖くて泣いたのだ、情けないと顔をうつむかせる鈴の頭を青年が優しくなでた。


「君、あれから逃げてきたんでしょ??」


その手は、ジーッと鈴を見下ろしていた青年のものだった。エッと反射的に顔を上げるが、涙があふれている汚い顔をさらす訳にもいかず、すぐに俯いてコクリと頷いた。


「あれって大男でも腰抜かしちゃうんだよね。君みたいな子なんかは、成す術もなく大抵パクリと食べられちゃう」


食べる!?!?あれ人食べるの!?!?と肩を震わせる。


「総司、むやみに怖がらせるな」


「なんでさ一君。僕は褒めてるんだよ??よく逃げてきたねぇって」


静かに、一と呼ばれた青年は総司と呼ばれた青年を誡めた。しかし、総司は褒めたつもりだったため、不服そうに口を尖らせた。


「それでは、言葉がたりん。大体お前は、相手のことを気にしてだな」


「うわ、また一君の小言が始まった」


嫌そうに顔を引きつらせる総司に、一はギロリと睨みを利かせた。


が、そんなことで総司が萎縮することなどないのはわかっている事なので、ため息をこぼして睨むのをあっさりとやめた。