家に着くといつもはあるはずのない靴が今日はあった。心臓がドクンと脈打った。嫌な予感がする。

私の家は一言で言ってしまえば複雑だ。私の小さい時に親が離婚して私は母に引き取られた。
母が再婚して新しくなった父との間に生まれた妹。
四人で暮らしている。

妹はここらで有名な私立の女子校に通っている。いわゆるお嬢様学校だ。

父はIT企業に勤めている。
母はといえば完全なる専業主婦だ。

はたから見ればごく普通の一般家庭に見えるだろう。

私を除けば。。家の中でも私の事を必要とする人なんてひとりもいない。
私をいない人間として扱う。会話をするようなことも無い。顔を合わせれば文句ばかり。それだけで収まらない時もあってその時は向こうの気がすむまで叩かれて蹴られる。決まっていつも見えないところにやるからタチが悪い。それにも慣れたけどやっぱり文句を言われるのは気分がいいわけなくてなるべく顔を合わせないよう生活している。

音を立てないように階段を登ろうとしたその時。。


『あら。貴方帰ってきたの?』


「…あ、うん。た、ただいま。」
それだけ言って再び階段を登ろうとすれば、、、

『いつまで帰って来るつもり?帰ってこなくてもいいのに。なんでまだこの家にいるのよ。』

あーぁ。はじまっちゃった。慣れたけどやっぱり唯一の血の繋がりのある母に言われるのはきつい部分があるなぁ。なんて思いながら母を見れば

『そんな目で見ないで!!!!あの人にそっくりなのよ!!!みるのも嫌!!!』

「お、お母さん。」

『お母さんなんて呼ばないで!!!吐き気がするのよ!』

「ごめんなさい。」
動きたいのに足が動かない。これ以上なにも言って欲しくないのに聞きたくないのに体が言う事を聞いてくれない。

『…よかった。』

「え?」

『あんたなんか産まなきゃよかった!!!消えてちょうだいよ!!私たちの前に現れないで!!』その言葉と同時にバチンッという乾いた音が響いた。

え?今なんて?まるでお化けでもみるかのように私をーーー


拒絶した。

頬がジンジンする。叩かれたんだ私。そう理解するのに時間はかからなかった。それよりも拒絶されたことに何よりもショックで仕方なかった。
母は怒り狂ってしまったのか手に持ってるグラスを私に投げてくる。ステンレスでできたグラスが私の頭に当たる。

ドンっと頭に重い衝撃が走る。ドクドクと早くなる脈。

あーあ。血が出ちゃってるよ。痛みは感じない。ただ変わってしまった母を眺めることしかできない。

そこに妹の桃香が帰ってきた。一瞬驚いてすぐに状況がわかったのか鬼のような形相で私を睨みつけて言った。


『あんた最低。さっさと出てってよ邪魔なのよ。私たち家族を壊さないで。』

その瞬間呪縛から解けたかのように足が動いた。それでもおぼつかないまま部屋に入りカバンに財布とケータイだけ突っ込んで気付けば飛び出していた。