ある日の放課後。


「ことちゃん、一緒に帰ろ!」


「あっ、はい!」



園田さんは夏休み中に少し髪を染めたらしく、外側は茶色っぽいけれど、内側には藍色がのぞいていた。


まだまだ残暑が厳しいのにもかかわらず、最近はずっと長い髪を下ろしている。


どうしても気になったので聞いてみた。



「園田さん、最近、髪の毛下ろしているみたいですが、どうかされたんですか?」


「別に、大した理由じゃないよ。こうしたいからこうしているだけ」


「そうなんですか。わたしは暑いので結んでしまいますね」


「ってかさ、ことちゃんっていつからメガネなの?コンタクトに興味ないわけ?」



言われてみればいつからわたしはメガネを掛けているのだろう。


保育園くらいからしていた気がする。


産まれた時から目が悪く、よく色んなところに頭をぶつけてたって、昔お父さんから聞いた。


そのことを園田さんに話すと、


「なんか、イメージ通り!やらかしそうだもん、ことちゃん」


と言われ、大笑いされた。


うん、その通りだ、きっと。


わたしはやらかす人間なんだ、産まれた時から。


ん?


気づいたら、園田さんの笑いは止まっていた。



「どうか、なさったんですか?」



園田さんは答えず、わたしは視線の先を見た。



「あっ!赤星くん!」


「ちょっと、ことちゃん!」



わたしは赤星くんの元へ駆けていった。


挨拶運動を始めて下さったからお礼を言いたかったんだ。



「赤星くん!」


「あっ、ことちゃん。まさにベストタイミングで来たね」


「へ?」


「これに出てもらうから」



そう言って渡されたのは、
「光蘭祭恒例!ミス光蘭コンテスト参加者募集」
と書かれたビラだった。



「いやいや、無理です!わたし、可愛くないですし、美しくもないです!特技も何もないし...絶対に無理です!」


「大丈夫。ことちゃんは誰よりも才色兼備で、何より俺のお墨付きだから」


「絶対に...」



大きな手で口を塞がれた。


無理です!無理です!と言っても、もごもごしていて何を喋っているのか分からない。



「ことちゃん。これ以上騒いだら、俺の口でそのお口塞いじゃうから」



わたしは耐えきれなくなって右手を挙げた。


ヘルプ、ミィ!


そしたら追いかけて来てくれた園田さんがわたしから赤星くんを引き離した。



「ことちゃんに手出すなって何回も言ってるでしょ?!いい加減にして!ほら、ことちゃん、いくよ」



園田さんがわたしの手を引く。


わたしは...立ち止まった。



「ことちゃん?」


「わたしのエントリーは済んでるんですか?」


「うん。ついさっきしてきた。もちろん、DP3の一條美湖、畠山朱比香、藤宮羽鳥は出るよ。その他にも1年生で容姿端麗な子が数人出る感じかな?」


「もしかして、ことちゃん...あれに...」


「出ます!やってやります、全力で」


「その言葉を待ってた。俺が全力でサポートするからよろしくね」