「波琉くん、お待たせ」


「あっ、お疲れ。カバン、持つよ」



学校が終わると必ず波琉くんは私のところに来てくれる。


電車で1時間もかけて毎日来てくれるなんて、私はやっぱり幸せ者だ。


幼なじみの麻水(あさみ)のカレシなんか平気で数日間も既読スルーするし、生徒会の会計になった後輩のカレシは他に何人も彼女がいて、一夜限りの関係を小6の頃から続けているらしい。


それに比べて私と波琉くんは純潔、健全、クリアな関係。


稀に見る純愛を貫くカップルなのだ。


だから、この関係を壊したくない。


ヒビを入れるような邪魔者は徹底的に排除する。


その覚悟はできている。


私には波琉くんと幸せになる価値がある。



「そう言えば、波琉くんの学校って、今年、文化祭ある?」


「オレらの学校は毎年あるよ。そういうのを大事にする学校だからね。良いか悪いかは別として」


「いいなあ。私の学校は3年に1回で、去年やっちゃったんだよね。せっかくなら3年の時にやりたかった」


「確かに」


「じゃあ、私、絶対見に行くね。波琉くんの勇姿を目に焼きつけなきゃ!」


「汐泉、気が早すぎるよ。まだ何やるか決まってないのに」


「そうだね」



私が笑うと波琉くんが笑ってくれる。


この笑顔をずっと一番近くで見ていたい。


永遠に波琉くんのシンデレラで居させてね。



「じゃあ、今日も水族館に行きますか」


「今日もメンダコちゃん、元気かな?」



波琉くんの手をぎゅっと握り、夕陽に照らされながら、いつもの道を歩いていく。


この幸せは自分の手で必ず守り抜く。