星名パバが帰宅し、オレと星名が事情聴取され、気づけば時計の針は10時を回っていた。
「いや、すまんな、波琉くん。面倒なことに巻き込んじまって」
「いえいえ、大丈夫です」
「昨日、大した飯食えなかったから来たんだろ?残りもんでいいならご馳走する」
「あ、ありがとうございます!」
「礼を言うのはこっちだ。湖杜を強盗犯から救ってくれた上に残りもんを食ってくれるなんてな!いやあ、残飯処理係がいるって最高だな!」
オレはいつもの席に座らせられ、星名パパと向き合って残飯を食べ進めた。
星名パパはバキュームのごとく目の前の食べ物を食べ?というよりは飲み込み、あっという間にごちそうさまをいった。
「まあ、波琉はゆっくり食え!
俺は朝定の下準備したら風呂に入って寝るわ!
ガハハ!
あとは湖杜、よろしくな!
ガハハ!」
何がそんなに面白いのか分からないが、星名パパはあんなことがあっても尚、愉快かつ豪快に笑いながら裏に消えていった。
そして訪れる沈黙。
数時間前のオレと百合野状態だ。
天気の話がダメだったのに、一体何を話せばいい?
「星名、あのさ...」
「オムライス、食べませんか?」
星名はそういうと厨房に行き、特大の皿に乗ったオムライスを持ってきた。
「残ったら、もちろんお持ち帰り下さい」
オレはオムライスのほぼど真ん中にレンゲを入れた。
卵とライスが同時に口に入れられる、絶妙な場所だった。
温め直したからか、いつもより卵は硬めだが、オレが好きな味にかわりない。
オレはどんどん口に入れた。
そんなにお腹が空いていた訳でもないのに、なぜこんなに食べられるのだろう。
不思議と心も体も満ちていく。
あっという間に3分の2を食べ、さすがにこれ以上は無理なのでプラスチックの容器に入れてもらった。
さて、お腹もいっぱいになったし、帰るか。
いや、待て。
腹を満たすためにここに来たのではない。
忘れかけていたが、あの事を聞かずして帰るわけにはいかないのだ。
オレは星名の目の前に座り直した。
「ど、どうしたんですか?」
「今日は聞きたいことがあって来た」
「わたしも青柳くんに言いたいことがあります。ですが、青柳くんからどうぞ」
なんでこういう時に限ってオレからなんだよ。
空気読んでくれよ。
オレがするのは、恐らく、きみの想像の遥か上をいく質問だぞ。
...はあ。
深呼吸を1つしてオレは言った。
「昨日、オレは星名に...き、き、き」
ここまで来てどもるんじゃねえよ、波琉。
やっちまったもんはしょうがないんだからさ。
って、なんでやってる前提なんだよ!
ああ、もう!
オレの頭をどうにかしてくれ!
「青柳くんからキスされましたよ、わたし」
「へ?もう一回言って」
「わたしは一度言ったことは二度と言いません!」
ああ、オレの言葉、そっくりそのまま返されちゃったよ。
でも、オレの耳は聞き取った。
確かに、聞いた。
――青柳くんからキスされましたよ、わたし。
酔ったオレの方が襲ってしまったってことか。
ああ、オレって、超やべえヤツじゃん。
オレは肩を落としまくった。
なんなら、地獄に落とされた気分だ。
グツグツ煮えた真っ赤な地獄温泉のなかでオレは熱い熱いと言いながら死んでいくんだ。
哀れな人生だったな。
享年17歳。
華のセブンティーンで死にます。
「さよなら!」
「あのぉ、何がさよならなんですか?そんなにわたしが嫌いですか?やっぱり園田さんの言う通りだったんですね」
まずい。
やっぱり星名は、百合野から話を聞いたんだ。
ったく、余計なこと言うんじゃねえ。
なんなら、今すぐ電話してやっても...って、オレのスマホ壊れっちまったんだった。
「わたし、青柳くんの友達を辞めます。
そうした方がいいんですよね、きっと。
わたしが青柳くんと一緒にいると色々まずいことに巻き込んでしまいかねないですし。
それに、嫌いな相手に一方的に近付かれるのってわたし自身も嫌ですしね。
ということで、さようなら」
星名がオレを強引に立たせ、腕を引っ張り、店の外に追い出した。
「最悪の誕生日にしてしまい、申し訳ありませんでした」
「あのさ、星名」
「嫌いな人間と話さない方が良いですよ」
「いや、でも。その、なんつうか...」
えっ...。
星名が抱きついてきた。
会う度にやられるともう、慣れてくる。
オレと星名はアメリカ人で、これは挨拶なんだと思えてくる。
しかし、今日は、
今日のハグは...違う。
今までのと違う。
「最後にこれだけは言わせて下さい。
青柳波琉くん、お誕生日おめでとうございます。
わたしはあなたに出会えて良かったです。
産まれてきて下さり...本当にありがとうございます」
「いや、すまんな、波琉くん。面倒なことに巻き込んじまって」
「いえいえ、大丈夫です」
「昨日、大した飯食えなかったから来たんだろ?残りもんでいいならご馳走する」
「あ、ありがとうございます!」
「礼を言うのはこっちだ。湖杜を強盗犯から救ってくれた上に残りもんを食ってくれるなんてな!いやあ、残飯処理係がいるって最高だな!」
オレはいつもの席に座らせられ、星名パパと向き合って残飯を食べ進めた。
星名パパはバキュームのごとく目の前の食べ物を食べ?というよりは飲み込み、あっという間にごちそうさまをいった。
「まあ、波琉はゆっくり食え!
俺は朝定の下準備したら風呂に入って寝るわ!
ガハハ!
あとは湖杜、よろしくな!
ガハハ!」
何がそんなに面白いのか分からないが、星名パパはあんなことがあっても尚、愉快かつ豪快に笑いながら裏に消えていった。
そして訪れる沈黙。
数時間前のオレと百合野状態だ。
天気の話がダメだったのに、一体何を話せばいい?
「星名、あのさ...」
「オムライス、食べませんか?」
星名はそういうと厨房に行き、特大の皿に乗ったオムライスを持ってきた。
「残ったら、もちろんお持ち帰り下さい」
オレはオムライスのほぼど真ん中にレンゲを入れた。
卵とライスが同時に口に入れられる、絶妙な場所だった。
温め直したからか、いつもより卵は硬めだが、オレが好きな味にかわりない。
オレはどんどん口に入れた。
そんなにお腹が空いていた訳でもないのに、なぜこんなに食べられるのだろう。
不思議と心も体も満ちていく。
あっという間に3分の2を食べ、さすがにこれ以上は無理なのでプラスチックの容器に入れてもらった。
さて、お腹もいっぱいになったし、帰るか。
いや、待て。
腹を満たすためにここに来たのではない。
忘れかけていたが、あの事を聞かずして帰るわけにはいかないのだ。
オレは星名の目の前に座り直した。
「ど、どうしたんですか?」
「今日は聞きたいことがあって来た」
「わたしも青柳くんに言いたいことがあります。ですが、青柳くんからどうぞ」
なんでこういう時に限ってオレからなんだよ。
空気読んでくれよ。
オレがするのは、恐らく、きみの想像の遥か上をいく質問だぞ。
...はあ。
深呼吸を1つしてオレは言った。
「昨日、オレは星名に...き、き、き」
ここまで来てどもるんじゃねえよ、波琉。
やっちまったもんはしょうがないんだからさ。
って、なんでやってる前提なんだよ!
ああ、もう!
オレの頭をどうにかしてくれ!
「青柳くんからキスされましたよ、わたし」
「へ?もう一回言って」
「わたしは一度言ったことは二度と言いません!」
ああ、オレの言葉、そっくりそのまま返されちゃったよ。
でも、オレの耳は聞き取った。
確かに、聞いた。
――青柳くんからキスされましたよ、わたし。
酔ったオレの方が襲ってしまったってことか。
ああ、オレって、超やべえヤツじゃん。
オレは肩を落としまくった。
なんなら、地獄に落とされた気分だ。
グツグツ煮えた真っ赤な地獄温泉のなかでオレは熱い熱いと言いながら死んでいくんだ。
哀れな人生だったな。
享年17歳。
華のセブンティーンで死にます。
「さよなら!」
「あのぉ、何がさよならなんですか?そんなにわたしが嫌いですか?やっぱり園田さんの言う通りだったんですね」
まずい。
やっぱり星名は、百合野から話を聞いたんだ。
ったく、余計なこと言うんじゃねえ。
なんなら、今すぐ電話してやっても...って、オレのスマホ壊れっちまったんだった。
「わたし、青柳くんの友達を辞めます。
そうした方がいいんですよね、きっと。
わたしが青柳くんと一緒にいると色々まずいことに巻き込んでしまいかねないですし。
それに、嫌いな相手に一方的に近付かれるのってわたし自身も嫌ですしね。
ということで、さようなら」
星名がオレを強引に立たせ、腕を引っ張り、店の外に追い出した。
「最悪の誕生日にしてしまい、申し訳ありませんでした」
「あのさ、星名」
「嫌いな人間と話さない方が良いですよ」
「いや、でも。その、なんつうか...」
えっ...。
星名が抱きついてきた。
会う度にやられるともう、慣れてくる。
オレと星名はアメリカ人で、これは挨拶なんだと思えてくる。
しかし、今日は、
今日のハグは...違う。
今までのと違う。
「最後にこれだけは言わせて下さい。
青柳波琉くん、お誕生日おめでとうございます。
わたしはあなたに出会えて良かったです。
産まれてきて下さり...本当にありがとうございます」



