花火がうち上がるまで1時間を切り、そろそろ絶景ポイントに移動しようとした時、宣言通り邪魔者が再登場した。
「波琉、ほんと、ずるい。こんな可愛い子、独り占めなんて」
「それ、昨日も言ってた。オレのカノジョなんだから当たり前だろ」
「うわあ、なんか今、すっごいこっぱずかしいセリフを言ってくれちゃったよ、コイツ。
何年も思い続けてくれたあたしにはなんも言わなかったくせに...。
ったく、今は初めてのカノジョにデレデレですか。ああ、熱すぎて見てらんない」
はあ、うるせえな。
昔からウザイやつだとは分かっていたが、まさかここまでとは...。
呆れる、疲れる。
どっかいってくれ。
「朱比香、汐泉さんと一緒に金魚すくいしたいんだって。ちょっとだけ、汐泉さんのこと貸してくれない?」
「ま、いいけど。但し、30分だけな。ベストポジションに移動する都合がある」
「だってよ、朱比香」
「オッケー!じゃあ、行きましょ、汐泉ちゃん」
「金魚すくい久しぶりだから楽しみです!いっぱいすくいましょうね」
金魚すくいにノリノリの2人が去っていき、つまんなさそうな百合野とカノジョを奪われたオレが残り、不穏な空気が流れる。
なんかしゃべんなきゃな。
思い起こせば百合野と2人きりになることなんて今までなかった気がする。
オレの中で百合野と朱比香はセットだったから。
しっかし、何を喋ろうか。
話題が見つかんない時は天気の話がいいんだっけ?
なら、そうするか。
「百合野、今日はいい天気だな」
「そうね」
なんだ、この冷めた返しは。
オレの話に興味無いなら離れろよ。
時間になったらここにくりゃいいんだし。
「あのさ」
突然百合野が話し出す。
どうした、百合野。
様子が変じゃないか。
「あたしね、やっと仲直りできたの、朱比香と」
「そういや、そうみたいだな」
「ことちゃんのお陰なんだ。ことちゃんが私たちの友情を繋ぎ止めてくれた」
百合野は、星名湖杜推しか。
アイツもアイツで、どこにでも顔出すなよ。
「波琉、あんたもことちゃんに変えてもらった1人だよ」
「は?」
「自分では気づいてないのかもしれないけど、波琉、確実に明るくなったよね」
「別にアイツのお陰って訳じゃないと思うけど。それを言うなら、汐泉だよ。汐泉がオレを変えたんだ」
百合野はふーんと意味深な反応を示した。
「ま、あんたがそう思いたいならそう思えばいいんじゃない」
「なんだよ、それ」
百合野の言いたいことがなんとなく分かる。
でもそれは確実に間違ってる。
絶対に違う。
「ああ、あたしも恋したいなあ」
訳の分からない悲痛の叫びを聞かせられる。
こんな調子で30分ももつのか。
余計なことを言わず、大人しくしているしかない。
「波琉」
百合野がオレの名前を呼び、しゃがみこむ。
なんとなくオレも隣に腰を下ろす。
百合野は夜空を見上げながらいった。
「ど直球に聞くね」
「は?」
「波琉は...ことちゃんのこと、好き?」
は?
なんでそんなこと聞くんだ?
好きとかなんとか、そんなのあるわけない。
オレはこれから一番大切な人に、大切なことを伝えるんだ。
訳の分からないことを言わないでほしい。
「なんで答えないの?」
「質問の意図が分からない。カノジョがいるオレに対してする質問か?いくら百合野が星名推しだとしてもオレの気持ちは変わらない、絶対に」
「じゃあ、質問の答えとしてはノー、つまり嫌いってことでよろしい?」
「ああ、それでかまわない」
オレがそう答えた瞬間、百合野から感情が消えた。
泣きも笑いもしない。
怒りも喜びもしない。
...無。
どうしたんだ、百合野?
本当になんか今日、おかしくないか?
だんだんオレも心配せざるを得なくなってきた。
「おい、百合野、どうしたんだよ」
オレがそう言っても何も言ってこない。
「百合野」
「波琉ってさ、冷たいよね」
「は?」
「なんでわかんないの?!」
百合野の大声にオレたちの周りにいた人たち全員が振り返った。
オレも、百合野を見た。
百合野は...泣いていた。
「ずっとあんたのことを思って生きてきた朱比香を簡単にふってみたり、ことちゃんを嫌いだって言ってみたり...。ほんと、最低だよ!」
「百合野、落ち着けって」
必死に宥めるも、百合野は完全に興奮してしまい、収まらない。
言葉は矢継ぎ早に飛んでくる。
「ことちゃんは、誕生日をまともに祝ってもらったことのないあんたのために、一生懸命準備してた。あんたに喜んでもらいたくて必死で...」
「...だから、何?」
気づいた時には遅かった。
氷柱のように冷たく、鋭い言葉が口から出ていた。
「オレが誰を好きになろうと百合野には関係なねえだろ?
オレはオレが選んだ相手にしか愛を渡さない。
愛は、そんなに易々しいもんじゃないから」
「波琉、ほんと、ずるい。こんな可愛い子、独り占めなんて」
「それ、昨日も言ってた。オレのカノジョなんだから当たり前だろ」
「うわあ、なんか今、すっごいこっぱずかしいセリフを言ってくれちゃったよ、コイツ。
何年も思い続けてくれたあたしにはなんも言わなかったくせに...。
ったく、今は初めてのカノジョにデレデレですか。ああ、熱すぎて見てらんない」
はあ、うるせえな。
昔からウザイやつだとは分かっていたが、まさかここまでとは...。
呆れる、疲れる。
どっかいってくれ。
「朱比香、汐泉さんと一緒に金魚すくいしたいんだって。ちょっとだけ、汐泉さんのこと貸してくれない?」
「ま、いいけど。但し、30分だけな。ベストポジションに移動する都合がある」
「だってよ、朱比香」
「オッケー!じゃあ、行きましょ、汐泉ちゃん」
「金魚すくい久しぶりだから楽しみです!いっぱいすくいましょうね」
金魚すくいにノリノリの2人が去っていき、つまんなさそうな百合野とカノジョを奪われたオレが残り、不穏な空気が流れる。
なんかしゃべんなきゃな。
思い起こせば百合野と2人きりになることなんて今までなかった気がする。
オレの中で百合野と朱比香はセットだったから。
しっかし、何を喋ろうか。
話題が見つかんない時は天気の話がいいんだっけ?
なら、そうするか。
「百合野、今日はいい天気だな」
「そうね」
なんだ、この冷めた返しは。
オレの話に興味無いなら離れろよ。
時間になったらここにくりゃいいんだし。
「あのさ」
突然百合野が話し出す。
どうした、百合野。
様子が変じゃないか。
「あたしね、やっと仲直りできたの、朱比香と」
「そういや、そうみたいだな」
「ことちゃんのお陰なんだ。ことちゃんが私たちの友情を繋ぎ止めてくれた」
百合野は、星名湖杜推しか。
アイツもアイツで、どこにでも顔出すなよ。
「波琉、あんたもことちゃんに変えてもらった1人だよ」
「は?」
「自分では気づいてないのかもしれないけど、波琉、確実に明るくなったよね」
「別にアイツのお陰って訳じゃないと思うけど。それを言うなら、汐泉だよ。汐泉がオレを変えたんだ」
百合野はふーんと意味深な反応を示した。
「ま、あんたがそう思いたいならそう思えばいいんじゃない」
「なんだよ、それ」
百合野の言いたいことがなんとなく分かる。
でもそれは確実に間違ってる。
絶対に違う。
「ああ、あたしも恋したいなあ」
訳の分からない悲痛の叫びを聞かせられる。
こんな調子で30分ももつのか。
余計なことを言わず、大人しくしているしかない。
「波琉」
百合野がオレの名前を呼び、しゃがみこむ。
なんとなくオレも隣に腰を下ろす。
百合野は夜空を見上げながらいった。
「ど直球に聞くね」
「は?」
「波琉は...ことちゃんのこと、好き?」
は?
なんでそんなこと聞くんだ?
好きとかなんとか、そんなのあるわけない。
オレはこれから一番大切な人に、大切なことを伝えるんだ。
訳の分からないことを言わないでほしい。
「なんで答えないの?」
「質問の意図が分からない。カノジョがいるオレに対してする質問か?いくら百合野が星名推しだとしてもオレの気持ちは変わらない、絶対に」
「じゃあ、質問の答えとしてはノー、つまり嫌いってことでよろしい?」
「ああ、それでかまわない」
オレがそう答えた瞬間、百合野から感情が消えた。
泣きも笑いもしない。
怒りも喜びもしない。
...無。
どうしたんだ、百合野?
本当になんか今日、おかしくないか?
だんだんオレも心配せざるを得なくなってきた。
「おい、百合野、どうしたんだよ」
オレがそう言っても何も言ってこない。
「百合野」
「波琉ってさ、冷たいよね」
「は?」
「なんでわかんないの?!」
百合野の大声にオレたちの周りにいた人たち全員が振り返った。
オレも、百合野を見た。
百合野は...泣いていた。
「ずっとあんたのことを思って生きてきた朱比香を簡単にふってみたり、ことちゃんを嫌いだって言ってみたり...。ほんと、最低だよ!」
「百合野、落ち着けって」
必死に宥めるも、百合野は完全に興奮してしまい、収まらない。
言葉は矢継ぎ早に飛んでくる。
「ことちゃんは、誕生日をまともに祝ってもらったことのないあんたのために、一生懸命準備してた。あんたに喜んでもらいたくて必死で...」
「...だから、何?」
気づいた時には遅かった。
氷柱のように冷たく、鋭い言葉が口から出ていた。
「オレが誰を好きになろうと百合野には関係なねえだろ?
オレはオレが選んだ相手にしか愛を渡さない。
愛は、そんなに易々しいもんじゃないから」



