「汐泉、買ってきたよ」


「ありがとう。じゃあ、いただきます」



ふわふわのわたあめにかぶり付き、まるでヤギが草を食べるようにムシャムシャと食べている。



「うふふ。これ、すっごく美味しい」



恐らく今日うち上がるどんな花火よりも華やかで輝いているであろう満面の笑みを見せてくる、汐泉。



「波琉くんも食べよう」


「じゃあ、お言葉に甘えて」



一口食べると口の中にじんわりと甘さが広がった。


この甘さは自分が今している恋に似ている。


そう思った。



「どう?美味しい?」


「久しぶりに食べたけど、美味しい」


「なら良かった!じゃ、食べながら射的に向かおうか」


「うん。そうだね」



わたあめを食べながらご満悦の表情でオレの隣を歩く、汐泉。


オレの側に、オレの隣にいてほしいのは汐泉だ。



...なのに、


それなのにどうして、


どうして、


アイツを思い出してしまうんだろう。



オレはアイツに対して汐泉とは違う感情を持っている。


それがなんなのか、オレには分からない。


恋?


愛?


いや、違う。


親近感...みたいな。


でも、それとも違う気がする。


適当な言葉が見つからない。



アイツに踏み込まれる度に、どんどん侵食されていってオレの心がおかしくなる。


その感情に気づいてしまったオレは、なぜか汐泉を真っ直ぐに見られなくなった。


不思議な感情に捕らわれながら、

答えを探しながら、

必死に汐泉の言葉に耳を傾けながら、

人混みを歩いていた。