小学校の卒業式を間近に控えた春の日。
事件は起きた。
卒業のお祝いにとオレは母と祖父母と共に卒業旅行に出掛けた。
熱海の温泉に浸かり、美味しい料理を食べ、部屋でのんびりしたりするつもりだったのだが、旅館に着き、最上階に通された直後に爆発音が聞こえた。
「調理場で火事が発生しました、直ちに避難してください」
というアナウンスが館内に流れた。
貴重品だけ持って出るのよ!と母に言われ、急いで部屋を飛び出すとエレベーターに長蛇の列が出来ていた。
奇しくも非常階段は出火場所の真横を通らないと行けず、使えなかった。
「子供と老人を先に!」
警察官だという宿泊客の一人であった若い男性の指示に従い、弱者達からエレベーターに乗せられた。
オレは嫌な予感がしていた。
ここで母と離れたら一生母に会えない気がした。
母と離れたくない。
もう誰も失いたくない。
オレが父の代わりに母を守るんだ。
オレは自分の順番が来ても乗らなかった。
「君、早く乗って!」
「嫌だ!絶対に乗らない!母さんと乗る」
「波琉、私はいいから先に行きなさい!」
「そんな...」
「いいから行きなさい!」
オレは無理やりエレベーターに押し込まれた。
「ボクはいいから母さんを!」
その叫びは届かず、オレはむさ苦しいエレベーターに乗って下ろされた。
事件は起きた。
卒業のお祝いにとオレは母と祖父母と共に卒業旅行に出掛けた。
熱海の温泉に浸かり、美味しい料理を食べ、部屋でのんびりしたりするつもりだったのだが、旅館に着き、最上階に通された直後に爆発音が聞こえた。
「調理場で火事が発生しました、直ちに避難してください」
というアナウンスが館内に流れた。
貴重品だけ持って出るのよ!と母に言われ、急いで部屋を飛び出すとエレベーターに長蛇の列が出来ていた。
奇しくも非常階段は出火場所の真横を通らないと行けず、使えなかった。
「子供と老人を先に!」
警察官だという宿泊客の一人であった若い男性の指示に従い、弱者達からエレベーターに乗せられた。
オレは嫌な予感がしていた。
ここで母と離れたら一生母に会えない気がした。
母と離れたくない。
もう誰も失いたくない。
オレが父の代わりに母を守るんだ。
オレは自分の順番が来ても乗らなかった。
「君、早く乗って!」
「嫌だ!絶対に乗らない!母さんと乗る」
「波琉、私はいいから先に行きなさい!」
「そんな...」
「いいから行きなさい!」
オレは無理やりエレベーターに押し込まれた。
「ボクはいいから母さんを!」
その叫びは届かず、オレはむさ苦しいエレベーターに乗って下ろされた。



