「ふわぁ…」

僕は目が覚めるとすぐに欠伸をした。目を擦りながら、部屋を出る。

「あ、アリス！おはよう！」

白髪に桃色の瞳を持った少女が僕に微笑んだ。僕も微笑み返す。

「おはよう。ビアンカ」

そう挨拶をすると、僕の胸にふわふわとした毛並みを持つ黒猫が飛び込んできた。

「……シャルルもおはよう」

いつもの挨拶を済ますと、シャルルを抱えながら廊下を歩き出す。

僕の名前はアリス。僕は人間ではない。魔法使いだ。しかも、ビアンカもシャルルも普通の女の子や猫ではない。妖怪だ。

昔、僕は傷だらけのビアンカとシャルルを助けたことがあり、それのお礼を兼ねてビアンカとシャルルが暮らす『ファンタジア』という世界へ連れて行ってくれた。

そのファンタジアの1番偉い人である女王様は、僕のことを気に入ったらしく、僕がファンタジアに行く度に歓迎してくれるのだ。

「…シャルル、そろそろ下ろすよ？僕、学校へ行く準備をしないと…」

「そうだね。分かった」

僕が手を離すと、シャルルはストン、と綺麗に地面に着地した。

身支度を済ませ、ふと鏡を見る。金髪に青い瞳を持った自分の姿が映っていた。開けた窓から入った風が僕の頬ぐらいまで伸びた横髪を揺らす。