水性のピリオド.



翌日、午前中のはやいうちに済ませておいた支度を出かける前に再度確認し整えて家を出る。

さいわい、両親は出かけていて杏ちゃんと叶人くんは十一時頃に部活に行った。

両親はわからないけど、杏ちゃんと叶人くんが帰るのは十五時頃。

杏ちゃんのバスケ部は時間通りに解散するけど叶人くんは自分から残りたがることもよくある。

結局、誰が何時に帰ってくるのか、どこかで鉢合わせしないかは定かにならない。


今から家を出るというのに岩井先輩に何時解散になりそうか、などとメッセージを送るのも違う気がして、誰もいない廊下をそろそろと通り過ぎる。

チャンキーヒールのブーツはブラックで、去年のこの時期に随分と履き慣らした記憶がある。

足を通すのは久しぶりなこともあって靴擦れは少し心配だけど、他に服と合いそうな靴がない。

杏ちゃんの靴をこっそり借りてもいいけど、それこそ慣れないものを履いて歩いて痛い目を見ることになる。


靴の方も半年以上前の主を覚えているのか、たんにクセがついていただけなのだろうけど、数歩歩く分には違和感がない。

姿鏡で全身をチェックして家を出ると、抜けるような青空がいちばんに目について、その眩しさに少しだけ眩んだ。