「大塚先生にはお笑いコンビにされるし」
「なんの話してます?」
「しまちゃんアンドなかちゃん」
「あ、ああ。たしかに、いそう」
怒ってないよ。
もういいよ、ってことがこのまま伝わるといい。
許すのもちがうし、許さないのもちがうのなら、どちらも選ばないことにしよう。
「戻ってきたら、春乃くんがいた。もうそれでよくない?」
所詮、こういうのって結果論だから。
会えたんだからそれでいいよ。
それに、人生で交わした約束の半分は叶わないものらしいよ。
大人になって、年老いたりすると多くなるその比率だけど、高校生にだっていくつかは割り当てられる。
「おれ、なんて答えたらいいですか」
「それもわたし頼み?」
「だって、この一言で振り出しに戻るのきついし」
「それはないから。いいかよくないか、どっち?」
わたし、あんまり気が長くないからさ。
答えが目の前にあるのに遠回りをしようとされると、イラッとしてしまう。
だからもう、簡潔に答えてよ。
「いい、です」
「よし。じゃあもう帰ろう。ほら、立って」
膝を抱いて丸まっている手を引っ張ってやる。
突然のことに驚いているみたいだけど、手を振り払われはしなかった。



