じわじわと頬が熱くなっていく。
痺れるような感覚と、脳みそが茹だっていくような感覚に目眩がした。
「今日、大塚先生の手伝いしながら、ずっと先輩のこと考えてた。だけど、水やりも放っておけなくて」
「大丈夫だよ。大塚先生に頼まれたらわたしも断れない」
「はい。でも、それは言い訳になるんです。大塚先生にちゃんと断りを入れて、一度ここに来るべきだった」
言い訳なのに言い訳らしくない使い方をする春乃くんの語尾は話せば話すほど小さくなっていく。
だけど、ふとしたタイミングで普通のトーンに戻って、また少し喋ると萎んでいく。
「ごめんなさい」
ずっと見つめ合っていたのに、春乃くんが頭を下げたせいで顔が見えなくなった。
そんなのどうでもいいから、って内心思ったけど、春乃くんの誠意に応えないといけない。
謝られたときって、どうすればいいんだっけ。
一応約束が守られなかったことに対しての罰は終わった。
きっと春乃くんの頭を上げさせられたら、もう話を掘り返すこともない。
「わたし、寂しかった」
迷った末に、言い訳という名の事実と本音を明かしてくれた春乃くんと同じものを返すことにした。
ここで春乃くんを待っている間に感じていたことを、ぜんぶ伝えよう。
「ここ、通り慣れてるけど留まるのには慣れていないからすごく心細かった」
「はい、ごめんなさ……」
ぜんぶに謝られていたらキリがない。
わずかに顔を上げて上目遣いでわたしを見上げる春乃くんのくちびる付近に人差し指を突きつける。
もちろん、吐息に触れてもくちびるには触れない距離で止まった。
「女の先生に見返り美人なんて言われても嬉しくないし」
「は……?」
「寂しい、の友だちみたいな感情が階段の上から流れてくるような気がして、こわくて、もう帰ることにしたの」
目に見えて、言葉に変えられるような感情じゃなかった。
たとえるなら、寂しいの友だちがいちばん合ってる。



