教室から離れてくると次第に遅くなる速度。保健室の前まで来ると、もうとぼとぼといった感じだ。



はぁ…勝矢に何て言おう。アイツは絶対に『傷付けた』ってだけじゃ納得しない。それ相応の理由がなければ…



今の俺には理由なんて分からない。ただたんに美香子に好きなヤツがいるってことが、元カレが忘れられないってことが悲しかったんだ。



こんなことで、勝矢が納得してくれるはずない。こんな気持ちのせいで、美香子を傷付けてしまったんだから。



はぁ…



もう一度ため息をついて保健室のドアを開けた時だった…アイツの声が俺の耳に届いたのは。



「っあん」



…あん〜?



「咲ちゃんて厭らしいよね、そんな声出して♪」



…『♪』だぁ?
つか、咲ちゃんって誰?



「い、じわるっ///」



えっとー、ここは白衣の天使こと保健医の築島先生がいらっしゃる神聖な保健室であって、男女の仲を深めるいかがわしいラブホテルではないのでは?