番組中、生放送で歌うことになっていて、スタジオにはファンたちが80人ほど集まってくれていた。

やっぱり、ファンを目の前にすると、自然と腹に力が入る。



今回の新曲は、私の微妙な気持ちの位置を、しっかりと一つの場所にとどめてくれるような、元気いっぱいの歌だ。

力いっぱい歌ったら、汗が流れた。

汗が流れたら、気持ちが少し軽くなった。


収録を終えて楽屋に戻る途中、優成と顔を合わせた。


私の横にいたポンちゃんがそわそわし始めた。

考えてみたら、さわやかな好青年タイプの優成はポンちゃんの好みのタイプだ。


「もし時間があったら、すこしお茶でもどう?」

優成が言って、了解を得るようにポンちゃんに微笑んだ。

ポンちゃんはどうぞどうぞと機嫌よく応えた。

思うように歌うことができて、ファンたちとも一体になれた手ごたえがあったので、気持ちが弾んでいた。

自然と、思い切って本当の事を優成に話そうという気持ちになれた。

「私も話したいことがあります」

そう言って、スタジオの中の小さな喫茶店で待ち合わせた。