かっこいい人がいる。

入学時のオリエンテーションが終わったばかりの4月、大学生で長蛇の列になっているバス乗り場に一際目立つ男子学生がいた。
前髪が長く表情はほぼ見えないが、イヤホンで音楽を聴く少し猫背の立ち姿を横から見て、ならは一瞬で恋に落ちた。
目を離すことができず、ダイレクトに「かっこいい」と感じたのだった。

それからは来る日も来る日も、ならは彼を探すようになった。
その見た目から友人の間で「雷様」とあだ名をつけた。
どうやら経済学部の一年らしい、というところまではすぐに分かったが、それ以上の彼にまつわる情報を得ることはできないでいた。

そしてそのまま7月になった。