蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「暗い顔するなよ。将来なんて、わかんねえだろ」


「そうね」

綾に笑いかけつつ、心の中では仁に僅かな不信感を抱いていた。

なぜ?

貴方達は、琢磨からことの一端を聞いているんじゃないの?

「和佳菜」

仁が真っ直ぐにあたしをみた。

「なに?」

「お前、それ…」

「わーかっなちゃん!」

後ろから抱きついてきた誰かのせいで身体が若干前に傾く。


うわっ、と思わず声も出た。

こんなことをする人をあたしは一人しか思いつかない。

「…どうしたの?千夏ちゃん、学校は?」

「んー?和佳菜ちゃんと遊びたいから休んできた!」

甘えた声出す彼女は、今日は一段と子供らしい。


幼稚園児みたいだ。


そのせいで仁からこの言葉は聞き逃したけれども。

「いいの?そんなことしても」


「いいんだよお。千夏ねえ、パパから何してもいいって言われてるの」

パパから?


「千夏ちゃんのパパってそういえば何してる人なの?」


「ん?どっかの社長だよ。あ、和佳菜ちゃんは?」


そんな時でも、彼女は隠すことを忘れない。


本当に感情で動かない人だ。


「あたしは分からないかな。ずっと離れて暮らしてるから」

「ママとかに聞かないの?」

「はぐらかされちゃうの。パパの話は嫌いみたい」