意外にもすんなりとお祖父様の元まで通してもらえた。
「…そこの若いのはなんだ」
「あたし、お祖父様の言う通りにはしません」
「若いのはなんだと言っているんだ!」
和室に杖をドン、と突いたお祖父様は酷く御立腹のご様子だ。
「お初めにお目掛からせて頂きます、東屋仁と申します。この度、和佳菜さんとの交際を認めて頂きたく、参りました」
正座をして、丁寧に畳に頭をつけたこの人は、これからお祖父様かどんな目に逢うか知っていてもなお、礼儀正しかった。
「お前にはワシの会社を継いでもらう」
「だから継がないって言っているでしょう」
「せっかくの婚約も破談にして、お前は一体何をしたいんじゃ」
「…世継ぎが欲しいなら、照史あたりに継がせればいいんじゃないの?」
照史も舞花もやる気あるみたいだしね。
「お前はこの伝統を何も知らない」
「伝統ばかり重んじていることが嫌なの。お祖父様とは合わないって思っているわ。そんな人間と、一緒に会社の運営するのなんて嫌でしょう」
それとも。
と息を吸った。
「あたしをなんでも言う通りになるただの道具にでもしたいわけ?」
貴方の言う通りなんかにしない。
「…お前は」
お祖父様はため息をついた。
やれやれ、と首まで振った。
「ワシの恩を忘れたのか?」
「なんのこと?」
「言ってもいいのか?その若造の前で」
「いいわよ。だって大したことじゃないから」
「あれのどこが大したことじゃないのだ!」
また、ドンと杖を突いた。
「お前が汚い薬草に手を出して出したと知ったワシがどれくらい、頑張ったのか!」
「そのことなんだけど」
そう言って、勝手に居間のテレビをつけた。
勝手に何をやっておる!とお祖父様の声が聞こえた気がしたけれど、無視だあんなもん。
だって、これからのことの方がもっと大切だから。



