蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



意外にもすんなりとお祖父様の元まで通してもらえた。


「…そこの若いのはなんだ」


「あたし、お祖父様の言う通りにはしません」


「若いのはなんだと言っているんだ!」


和室に杖をドン、と突いたお祖父様は酷く御立腹のご様子だ。


「お初めにお目掛からせて頂きます、東屋仁と申します。この度、和佳菜さんとの交際を認めて頂きたく、参りました」


正座をして、丁寧に畳に頭をつけたこの人は、これからお祖父様かどんな目に逢うか知っていてもなお、礼儀正しかった。


「お前にはワシの会社を継いでもらう」


「だから継がないって言っているでしょう」


「せっかくの婚約も破談にして、お前は一体何をしたいんじゃ」


「…世継ぎが欲しいなら、照史あたりに継がせればいいんじゃないの?」


照史も舞花もやる気あるみたいだしね。


「お前はこの伝統を何も知らない」


「伝統ばかり重んじていることが嫌なの。お祖父様とは合わないって思っているわ。そんな人間と、一緒に会社の運営するのなんて嫌でしょう」


それとも。


と息を吸った。


「あたしをなんでも言う通りになるただの道具にでもしたいわけ?」


貴方の言う通りなんかにしない。


「…お前は」


お祖父様はため息をついた。


やれやれ、と首まで振った。


「ワシの恩を忘れたのか?」


「なんのこと?」


「言ってもいいのか?その若造の前で」


「いいわよ。だって大したことじゃないから」


「あれのどこが大したことじゃないのだ!」


また、ドンと杖を突いた。


「お前が汚い薬草に手を出して出したと知ったワシがどれくらい、頑張ったのか!」


「そのことなんだけど」


そう言って、勝手に居間のテレビをつけた。


勝手に何をやっておる!とお祖父様の声が聞こえた気がしたけれど、無視だあんなもん。



だって、これからのことの方がもっと大切だから。