そうしたかったわけじゃない。
そうせざるを得なかっただけだ。
お祖父様が、あたしにいうことを聞かせたいからした、コドモのようなことだった。
あの写真が捏造であると、祖父の会社の人間が何人もいれば分かるはずだ。
だけど、あたしは本家の子供だから。
好き勝手やったあたしに与えた罰だった。
「キミが知ってる通り、俺はルカ・シェードの隠し子だ。俺なら、そっちに婿養子にでもなれる」
「は?」
なんせ、隠し子だからね?
彼は乾いた笑みを浮かべた。
「だって誰だかわからない人間とお見合いして結婚するなんて嫌でしょ?」
「貴方、…っ何言って」
「父様がすごく気に入ってたから、どんな人物か調べたのに、調べれば調べる程ハマっていっちゃった」
にんまり、なんて気味の悪い笑みなのだろう。
「俺のものになってよ」
タイミングがいいのか悪いのか。
「着きました」
運転手がそう声を上げた。
素早く黒スーツの男があたしの腰に、拳銃を突きつけた。
一見、エスコートしているようにも見えるそれは、怪しまれることなどないだろう。
「おいで」
「ここは?」
「ホテル」
それは知っている。
巷では高級なホテルとして有名だ。
そうじゃない。あたしが聞きたいのはそういうことではないのだ。
「趣旨を説明して」
「部屋に入ってからね」
車から彼が先に降りた。
そしてあたしに左手を差し出す。
その手を取りたくない。
怖い、この先起こることが。
良くないことだと、その予感だけがあたしに知らせるから。



