「えっ…でも、殺したのはマークだって」
「今の時代って便利だよね。マーク様そっくりのマスクを作ることだって、出来るんだから」
まさか…。
あたしはあの男の目を慌ててみた。
その目は、魚のよう。
煌めきはなくて、落ちるところまで堕ちた。
死んだ人が目を開けていたら、きっとこんな感じなんだろうなと思わせる。
そんな目。
「和佳菜、お前は分かったみたいだね。シリコンマスクって知ってる?結構いい代物だよ。あれでみんな騙されてくれたんだから」
「…ってめぇ!」
「っ仁!だめよ」
「殴りたきゃ殴ればいいよ。今更僕を殴ったって、お前の母親は還ってこないよ」
彼は、佐々木さんを見た時とは打って変わって、冷静になっていた。
いきなり現れた仁に、眉ひとつもあげないくらいには。
「お前…」
「言っておくけど、マーク様の許可は取ってるよ。それに、ウチの欲しいものを用意できなかったキミらが悪いことを忘れないで欲しいな」
あたしの違和感もこれで分かった。
マークは子供を殺せない。
でも、任務は遂行させなければいけない。
だから、彼に託したのだろう。
ディビッドなら、うまくやってくれることを、マークは分かっていたのだから。
「…貴方が、殺したのはまあたくさんいるのでしょうね。…だけど、1番初めは間違えなく、貴方の母親でしょう」
「そうだね、最初はあの人だ。…僕は愛されない子供だったから」
「…は?」
何言っているんだ、という顔を佐々木さんがしたのをあたしは初めて見た。
「義理の兄が来てから、いや、来る前から。僕はあの家では随分と愛されない子供だったんだよ。それこそ、雑用係だった」



