一瞬の静寂と共に。
聞こえたものは怒号だった。
「…なんで!なんで!誰も助けてくれないんだよ!俺はずっと、ずっと苦しかったのに!」
まずい。
言葉のチョイスを間違えた。
隣にいた翔の気配が、一瞬だけ消えた。
その次の瞬間。
「ゔっ!」
翔がまたがってきた。
全体重を掛けているわね、これ。
なんて、のんきなことを言っている場合ではない。
「なあ、和佳菜。俺なんか、救われなくていいと思ってんのか?あ?なあ、そうなんだろ?」
「翔?あの、ね…っ!話を、…聞いて!」
「聞く?何を?和佳菜の答えはそれが全てなんだろ。それ以上に何がある、何を持ってる?」
正気失って、前が見えていない。
本音を言わせてくれない!
その時、ふっと翔の力が抜けた。
彼は、…笑い出した。
「あいつが殺そうとしたみたいに殺されれば気が済むんだな。ああ、そうすれば良かったんだ。簡単なことじゃねえか」
怖い。
その目が。
その顔が。
一瞬動けなくなったその隙を狙うように。
ぎゅうと、首が絞まる。
「……っはぁっ……!?」
目がチカチカする。
苦しい、苦しい。
どうして、こんなことになった?
あたしが、言ってはいけない言葉を言ってしまったから、いけないの?
だけど、あれにはちゃんと理由が、ある…のに…。
もう、光が見えそうになくて。
あたし、本当に死ぬんだって、そう、理解したら。
生きていく気力も、湧かない。
最後に僅かに。
「なあ、和佳菜。それだろ?目的はそれなんだろ?」
そう言われた、ら。
何故か、急に。
苦しくて、酸素が足りなくて、辛いのに。
その言葉で、あたしに沸き起こって来たのは。
「…なに、言ってんのよ!!」
ばちん、と大きな音は、その場いっぱいに広がった。



