蒼の花と荒れる野獣Ⅱ




一瞬の静寂と共に。



聞こえたものは怒号だった。



「…なんで!なんで!誰も助けてくれないんだよ!俺はずっと、ずっと苦しかったのに!」


まずい。


言葉のチョイスを間違えた。


隣にいた翔の気配が、一瞬だけ消えた。


その次の瞬間。


「ゔっ!」


翔がまたがってきた。


全体重を掛けているわね、これ。


なんて、のんきなことを言っている場合ではない。


「なあ、和佳菜。俺なんか、救われなくていいと思ってんのか?あ?なあ、そうなんだろ?」


「翔?あの、ね…っ!話を、…聞いて!」


「聞く?何を?和佳菜の答えはそれが全てなんだろ。それ以上に何がある、何を持ってる?」


正気失って、前が見えていない。


本音を言わせてくれない!


その時、ふっと翔の力が抜けた。


彼は、…笑い出した。


「あいつが殺そうとしたみたいに殺されれば気が済むんだな。ああ、そうすれば良かったんだ。簡単なことじゃねえか」



怖い。



その目が。



その顔が。



一瞬動けなくなったその隙を狙うように。



ぎゅうと、首が絞まる。


「……っはぁっ……!?」


目がチカチカする。


苦しい、苦しい。


どうして、こんなことになった?


あたしが、言ってはいけない言葉を言ってしまったから、いけないの?


だけど、あれにはちゃんと理由が、ある…のに…。


もう、光が見えそうになくて。


あたし、本当に死ぬんだって、そう、理解したら。


生きていく気力も、湧かない。


最後に僅かに。


「なあ、和佳菜。それだろ?目的はそれなんだろ?」


そう言われた、ら。


何故か、急に。


苦しくて、酸素が足りなくて、辛いのに。


その言葉で、あたしに沸き起こって来たのは。




「…なに、言ってんのよ!!」




ばちん、と大きな音は、その場いっぱいに広がった。