仁side
「いいのかよ、仁!和佳菜に行かせて」
綾が叫んだのはどうでもよかった。
「止めたって無駄だろ」
「そうじゃないだろ。和佳菜はお前にだけは忠実だよ」
「いや、やると言ったら聞かねえよ」
どこまでも心のある強くて格好いい女性だ。
そして、誰が反対しても器用にやり遂げてしまう。
「和佳菜が傷つくかも知れねえとか考えねえのかよ」
その言葉で俺の心の中に火がついた。
「考えるに決まってんだろ!」
何言ってる。
いつも傷つけたくねえってそればっかり思ってる俺が。
だけど和佳菜を信じて、信じて見守ってる俺が。
あいつのことを考えてないわけないだろ。
「和佳菜のことを信じてんだよ」
多分この中の誰よりも。
あいつの想いを叶えてやりたいって願ってる。
「大事だからこそ、俺は俺のやり方で護る。和佳菜の護り方まで片付ける筋合いはねえはずだ」
「あるさ。俺らの大切な姫なんだから。お前のショユウブツじゃねえんだよ!」
ダン、と綾がヒステリックにローテーブルを叩く。
「所有物なんかじゃ…」
「お前ら、落ち着けよ」
それを静かに悠人が諭してくれた。
「お前らが和佳菜を大事に思ってんのはよくわかったから。もう行っちまったし、帰ってきてからなんとかしろよ、2人で」
「なんで、俺も」
「だって、仁のモンじゃねえんだろ?なら、さっき和佳菜の行動を止めきれなかったお前の問題でもあるんじゃないの?」
違う?
と言われれば、綾は黙った。
「まあ、あれが吉と出るか凶と出るかなんて誰もわかんないんだし。今はこっち」
ドンっと、悠人が置いたのは、大量の資料だった。
「これ印刷してて遅くなったんだよ。お詫びも兼ねて、お前らの仲取り持ってやったんだから、話し合いにはしっかり参加しろよな。特に綾」
いつも話合いの場から途中で逃げ出す綾を牽制した悠人が。
「翔が出てきた時には、俺らの意見くらい固めておこーよ」
この場に置いて誰よりも頼もしかったのは言うまでもない。



