「は?あいつ、父親に会ったのか?父親のせいで家に帰れねえのに」
疑念がより深く、しかししっかりと固まって行く。
「おい、悠人。それ以上は控えろよ。多分和佳菜は…」
そう言ってチラリとこちらを見た綾は明らかにあたしを憐んでいた。
「そうよ、何も聞いていないわ。だから何も言わないで」
あたしの本人以外からは事情を聞かないスタイルに、悠人はため息をついた。
「…それは分かったけどさ。仁、どうする?これじゃ幹部会議なんか始められない。大きな計画には大体翔が絡んでくれるから問題なく動けるんだし」
翔はこういったことには顔が広かった。
彼の武器は誰にでもいい顔が出来ること。
それによって、自分達の行動を上手く実行に移すことができてきたのに。
それができない今、…あたしがやるべきたったひとつのことは。
「…あたし、翔と会ってくる」
駆け出すあたしに綾が静かに口を開く。
「お前が行ったところで解決なんかしねえよ」
「解決させる為じゃないから」
ドアの前であたしは立ち止まる。
そうあたしが彼に会うのは、別に解決させるためではない。
「はあ?」
「あたし1人がどうにか出来ることだとは思わない」
だって彼は1年前もここに住んでいた。
彼が抱えている思いは数日とか数ヶ月とかそんな軽いものではない。
少なくとも一年は抱えているものなのだ。
「じゃあ何すんだよ」
綾は悔しいのだろうか。
ぽっと出のあたしに出来ることなんかないって、どこか見くびっているのだろうか。
「忘れたの?あたしはずっとマークの側にいたのよ」
いいえ、それだけではない。
マークの隣で、正気のない人間であるかも怪しい奴らと、駆け引きをしてきたのだ。
「…会ってくる。本当の翔と」
あたしが見ていた上辺の優しい翔ではなくて。



