それからあたし達は菅谷さんのお迎えの車で、佐久間先生のいる総合病院に向かった。
「佐久間先生は…」
そう聞けば、看護師さんは大体の事情を察してくれるらしい。
「まだ集中治療室におりまして、そちらでお掛けになってお待ちください」
指を指されたのは、廊下の椅子だった。
裏口近くの薄暗い廊下。
気味が悪いが仕方がない。
「どうしてここから来ないと佐久間先生に会えないの?」
菅谷さんがここの前で降ろしてくれて、仁がそう言うから入ったのだけれど。
「この病院だってな、俺らと関わっているって知られたくねえんだよ」
裏社会と関わってるなんて知られたら世間的にはおしまいなのだから。
だけど人は助けたい。
どんな極悪人も、人は人であり、私たちの生業は人を助けることだから。
そう創設者は語り、佐久間先生より前にも何人も闇医者を雇ってきたらしい。
なんて美談なのだろう…だけど、あたしに言わせればただの綺麗事。
それでもここにお世話になったひとが多いのもまた事実。
その美談に助けられた命が何千とあるのだ。
佐久間さんは表向きはただの清掃スタッフだから、一般のひとで彼を先生と呼ぶ人はいない。
だから、彼を先生と呼んだらそれが合図。
あたし達がただの来客じゃないってすぐに分かる。
そして彼は。
何かあったら、即座に切られる。
清掃スタッフがひとりいなくなっただけ。
そう、それだけに収めるのだ。
なんて、悲しい世界なのだろう。
悲観してばかりではいけないって分かっている。
それでも、やはり。
光が有れば影もある。
あたしはその影に当たる人間で。
もう二度と表の世界には戻ってこられないのだと、そう悟った。



