この場にいなかった他の下っぱ君達が来てくれて、次々と運び出されて行く。
救急隊の人もいて、ああただ事じゃなかったのだとあらためて思い知らされた。
裏社会のことは裏社会で清算する。
もはや慣わしとされているその文化さえも打ち砕いてしまうほど、あたし達の仲間の状態は酷いものだった。
全員が運び出されたあと。
あたしは、もう動けなかった。
ペタリと、お尻を地面についてしまい、力など出てこなかった。
体は平気だ、怪我はしていない。
だけど、動けなかった。
「…和佳菜」
見上げると仁が横に立っていた。
「仁…。みんなは?」
「佐久間さんのところに運んだよ。重傷者が多すぎて、一部佐久間さんの知り合いの方に頼んだくらい。25名のうち15名が重傷者。残りは気を失って倒れてただけ」
「そっか…」
「和佳菜の処置がよかったって、救急隊の人が言ってた。どこで学んだんだ?」
「アメリカにいた時。救命救急の資格は取っていたの。医者になろうと思っていたんだけど、側に居られなくなるからって、マークに拒否されて、代わりに」
少しでも人を救えたらと思ってとった資格がまさかこんなところで役に立つとは。
「…よくひとりで頑張ったな」
仁が頭を撫ぜてくれた。
「…ひとりじゃないでしょう、仁だっていたじゃない」
「でもこの重傷者の手当をしたのはお前だ。よく頑張ったよ」
そう言ってそっと抱きしめてくれた瞬間、涙がこぼれおちた。
「…みんな、大丈夫かなぁっ…」
「あいつらのことだよ。生命力だけはえげつねえから、大丈夫」
「生きててくれるかな…っ?死なないかな…?」
ぽんぽんと背中を優しく叩かれると余計に止まらなくなった。
「怖い…。もう誰かが死ぬのは嫌なの」
蓮もマークも、もう目を覚さないの。
何度会いたいと願っても会うことは許されないの。
もうそんな気持ちになりたくない。
「…大丈夫だ。だから信じよう。あいつらを」
そう言った仁の声も僅かに震えていた。



