蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



仁の暖かさに、自分の命がここにあることを改めて知った。


「自分を犠牲にして、何かをしようとしないでくれ」


その苦しげな声にあたしは謝るしかなかった。


「…ごめんなさい」


「だめ」


「え、そんなことを言われても」


「だめ。和佳菜はまた同じことする」


「そんな。しないわよ?あたしだって学ぶのだから」


「和佳菜には前科がある」


「前科?」


さぞ重大な罪のように仁がいう。


「一年くらい前に、志田の野郎に追い回されただろ?お前、自らぶつかりに行ったじゃねえか」


「え、あれ前科なの?」


怒られた気が全くしないのだけど。


「前科に決まってんじゃん。あの時マジで心臓止まるかと思った」


ああ、もう終わらせようと思った時だ。


あの時、あの人の声が聞こえたの。


お前がやれって、そういったの。


あたしはその通りに動いて…。


そうしたらこの人に悲しい顔をさせてしまったのね。


「ごめんね」


あたしが大切にしたい人は1人しかいないの。


それはマーク、貴方ではない。


「ほんと、変わんないな。あの頃と」


「それは良い意味?」


「よくない意味」


「嬉しくないわね」


「もうしない、とか。そんな安っぽい言葉はいらねえから。…だから、」



彼は息を吸って。


吐いて。



「俺の彼女になって、ずっと離れんな」




そう言った。