ここまで言われてしまったら、あたしは折れるしかない。
小さく頷くと、ありがとうございます、とセブさんは頭を下げて話し始めた。
[…マーク様は。ホテルに一緒に住われていた期間、仕事が早く終わるように懸命に調整されていました。…そして、貴女を置いていった日。マーク様は最後まで貴女を連れて行く気でした。だけど貴方の心の中に他の男がいることを、マーク様は感じていらした]
[他の男…?]
そんな人間は、あたしは考えないように、していたのに。
あの日、全てを受け入れて繋がった淡い痛みと幸福感を貴方と共に感じたあの日。
あたしは、貴方だけしか見えなかったはずなのに。
だからあたしはあんなに苦しんで、病院まで通って。
[あの日のあたしに嘘はなかったわ]
ちゃんと、貴方を好きになって。
ちゃんと、貴方と繋がって。
ちゃんと、あたしは…
裏切られてきたのよ。
[わたしもそう思います。和佳菜様は、マーク様をとても愛されていたと]
[じゃあ…]
[だけどマーク様は。眠りながら、泣く貴女様を見て、このままではいけないと悟ったようです]
泣いていた記憶は存在しない。
だけど起きたらマークが悲しげに微笑んでいた記憶はある。
どうしたの、と聞いても答えないから諦めていたのだけど、まさかそんな理由があったなんて。
[長引いてきた日本での仕事が全て終了し、本当に帰ると、そうなった時。マークは貴女を本当に欲しいと思っていたと同時に貴女の幸福をあの場で誰よりも願っていたのです。…本当にこの世界に向かない人でした]
そうか、だから貴方は。
[和佳菜様をご自分から解放する為に、マーク様は別れを選んだのです]



