[2人はここで待っていてね]
[え、俺ら入れねえの?]
入る気満々だったのだろう瑞樹が眉をハの字にした。
[当たり前じゃない。マークの意思よ。これが片付けられる時までそれくらい守らなくちゃ]
そう言ってデイビッドの返事を待たずにあたしはチャックを開けて中に入った。
「うわああ…。綺麗……」
中には色とりどりの花や草木が植えてあった。
[んなこと言うなら俺らも入れろよ!]
[いやよ!こここはあたしとマークの花園なんだから]
瑞樹の文句に反論してからゆっくりと足を一歩踏み出した。
直径20mの小さな植物園は、柔らかな風に揺らされてサラサラを音を立てている。
気持ちいい…。
中央には白い丸テーブルと、セットになっている椅子か二脚あった。
ああ、ここであたしはマークとよく喋ってわがままをたくさん聞いてもらった。
彼はいつも困った顔をしながらも最後はいいよって言ってくれるんだ。
あたしが夜の行いに積極的になれない時は、彼は決まってここに連れてきてくれて。
ずっと待ってるって、言ってくれたの。
ねえ、言ってくれたのよ。
どうして、どうして先に逝ってしまうの。
あたしを置いて行かないって言ったじゃない。
ひとりにしないって、ねえ、言ったでしょう。
嘘つき。
マークの…。
「マークの嘘つき…」
頬を伝う涙に、寂しさが零れ落ちた。
あたしずっと待っていたの。
貴方に初めて反論しようと思っていたの。
あたし達は恋人同士だったよ。
幸せで、かけがえのない大切な恋人だったよ。
空を仰ぐ。
空なんて白いテントのお陰で少しも見えないけれど。
あたしの中には確かに存在する。
笑う。
にっこり、そうよ、全く綺麗ではないけれども、笑うのよ。
笑え、笑ってしまえ。
そしてもう。
終わろう、終わりにしよう。
「マーク。あたしね、好きなひとができたの。大切なひとなの。あったかくて、優しくて、脆いけど、強いひとなの。その人があたしのことを好きなのかって聞かれたら、わかんないけど、でも出来るだけやってみたいの」
ふと、その時ある花が目に入った。
コスモス、だ。
『マーク!あのね、コスモスを植えてもらったの。本当に綺麗ね!』
『そうだね。和佳菜以上に綺麗なものなんてないけどね』
『ふふ。お世辞が上手なんだから』
『お世辞なんかじゃないよ。
君はいつだって、一番綺麗だ______』
コスモスを見つめる。
その時。
風が吹いていないはずなのに、揺れた。
目を見張る。
涙がまた、溢れた。
ああ、貴方はここに来てくれたのね。
「マークがね、教えてくれたんだよ。人を愛するってこんなに幸せなことなんだって。何にもないあたしに教えてくれたの」
ここに貴方はいない。
土の中で眠っている貴方に、直接言うことは出来なかった。
だけど、届いていると信じている。
貴方がここに来ている、ねえそうでしょう?
「貴方は許してくれないかもしれないね。だけど、それでも。いつか貴方に認めてもらえるように頑張るから、あたし。だから
別れよう、マーク」



