[え……?]
真実、だって?
あれ以上の真実を誰が知っているのだろう。
[よく聞いて、マークが秘密にしておけって、そういうから黙っていたけど。私達には話す権利がある]
マリアさんがあたしの目を見つめた。
綺麗で穏やかな色を纏う彼女が。
こんなに真剣な顔をしていたことはなかった。
あたしが知らないことがあるの?
あの一件で。
あたしは学んだのだ。
《後悔しないように生きよう。もう二度と、蓮みたいなことが起こらないように》
後悔したくない、この人がこんなに真剣な顔をしている話を聞かない手はない。
だから、あたしは頷いて____。
[教えてください]
そう言ったの。
その話は瑞樹の言葉の意味も綺麗に解き明かした。
あたしの理解も、全てを覆して。
何もかもを変えてしまった。
「…嘘」
こぼれ落ちた言葉は、15年間使っていた英語ではなく、日本語だった。
[本当に…っ本当に、申し訳ありませんでした]
泣きながら謝るマリアさんを呆然を見つめる。
ずっと考えていた償いの心はどこに置いていったらいいのだろうか。
[……マークに逢いに行ってもいいですか]
ただ会いたかった。
あって貴方に色々な話をしなくてはいかない。
[もちろん]
アランの泣きそうな笑顔にあたしは目一杯微笑んだ。
キングベッドが20近く入りそうなくらい大きな部屋は、家具の配置さえあたしがいた頃そのままだった。
そして、彼は。
部屋の中央で眠っていた。
小さな、彼専用の箱の中で。
もう二度と覚めない夢を、永遠と見続けている。
ドライアイスの香りに、鼻を塞ぎたくなった。
彼はもう返事なんかしないのに、アランはマークに声をかける。
[…お前が好きで仕方ない人が来てくれたよ。よかったな]
その笑顔は極悪人の彼からは想像できないほど悲しみに満ちた笑顔だった。
アランは厳しい人だった。
それは他人であろうと身内であろうと、変わらない。
自分の後継者にするため。
マークは必要以上にしごかれていた。
ぶたれ、泣かされ、誰よりも強く当られてきた。
その中で、ミスなど絶対にあってはいけなかったのだ。
だからこんな笑顔、マークだって見たことがなかったに違いない。
[和佳菜さん、私からも言わせてください。二度も辛い目に合わせて、本当に申し訳ありませんでした]
棺の隣で膝をついて謝罪するトップなど、誰が見たことがあるだろうか。
[お顔を見ても?]
[もちろん]
いいよ、とは言わない。
ダメ、とも言わない。
許しはしない。
あたしの目的はマークに会うこと。
それ以外の雑音を耳に入れるのは、マークに失礼だ。



