蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



[和佳菜ちゃんはハーブティーが好きだったのよね?]


コトリ、と目の前に置かれたカップとソーサーはあたしが気に入っていた美しい鳥の柄。


なにもかも覚えているマリアさんの記憶力にひっそり感嘆した。


[あ、そうです。ありがとうございます]


ここにいた頃はカモミールのハーブティーが好きだった。


マークにせがんで色々な会社のハーブティーを取り寄せてもらったなあ。


日本に帰ってからは一度も口にしていなかった。


やっぱり思い出したくはない記憶に変わりはないから。


[瑞樹はコーヒーでしょ?]


[…そうです。俺のまで覚えているなんて]


[当たり前でしょう?貴方達は私の大事な家族なんだから]


にっこり微笑むその笑顔が痛々しい。


無理をして笑っているのがバレバレだ。



[マリアさん…]


[ごめんね、こんな所まで来てもらっちゃって。向こうでは元気にしてた?瑞樹からちょくちょく写真と手紙を貰ってたんだけど]


[えっ…?]


隣にいる瑞樹を睨むが、当の本人はそ知らぬ顔。


[あれ?知らなかった?ごめんね、和佳菜ちゃん。でも私、あれ楽しみにしてたの。私にとって娘みたいなものだから]


貴女はそう笑うけど。



[じゃあ、なんであたしはあの日。貴方がたに見捨てられたのですか?]