[和佳菜ちゃんはハーブティーが好きだったのよね?]
コトリ、と目の前に置かれたカップとソーサーはあたしが気に入っていた美しい鳥の柄。
なにもかも覚えているマリアさんの記憶力にひっそり感嘆した。
[あ、そうです。ありがとうございます]
ここにいた頃はカモミールのハーブティーが好きだった。
マークにせがんで色々な会社のハーブティーを取り寄せてもらったなあ。
日本に帰ってからは一度も口にしていなかった。
やっぱり思い出したくはない記憶に変わりはないから。
[瑞樹はコーヒーでしょ?]
[…そうです。俺のまで覚えているなんて]
[当たり前でしょう?貴方達は私の大事な家族なんだから]
にっこり微笑むその笑顔が痛々しい。
無理をして笑っているのがバレバレだ。
[マリアさん…]
[ごめんね、こんな所まで来てもらっちゃって。向こうでは元気にしてた?瑞樹からちょくちょく写真と手紙を貰ってたんだけど]
[えっ…?]
隣にいる瑞樹を睨むが、当の本人はそ知らぬ顔。
[あれ?知らなかった?ごめんね、和佳菜ちゃん。でも私、あれ楽しみにしてたの。私にとって娘みたいなものだから]
貴女はそう笑うけど。
[じゃあ、なんであたしはあの日。貴方がたに見捨てられたのですか?]



