蒼の花と荒れる野獣Ⅱ




「…仁?」


「ありがとな」


何を言い出すと思ったら。


それもこの体制で言うことかしら。


「お礼を言われるようなことはしていないはずよ。寧ろ、あたしの方がお礼を言わなくては」


「和佳菜はお礼よりも謝罪だな」


「え?」


「俺らに何も言わないで行った罪」


「罪って、そんなに重くはないはずよ」


慌てて言い募ると、仁がはあとため息をついた。


そのまままっすぐに目を合わせられる。


心臓がドクンと大きく高鳴る。


「頼れよ…なんの為にいるんだよ」


「頼る為じゃないでしょう」



「お前が壊れない為だよ」



壊れる、その言葉がぴったりだった時があった。


「…マークの時みたいに?」


「分かってんなら、無茶すんなよ」


今分かったの、と言えば、じゃあこれからは無理しないの、と怒られた。


「だって」


「千夏がああなったのはお前のせいだって?」


「仁こそ、…分かっているなら、遮らないでよ」


「あれはお前のせいじゃないだろ」


「でも、マークが」


「マークとお前はずっと一緒なのか?あいつがしたことはお前がしたことにつながるのか?」


なんで怒る口調になっている?


その雰囲気が僅かに怒気が孕んでいた。



「自分勝手だって、分かっているの。もうずっと知っているの。それでも、あたしは自分の罪悪感を晴らしたかったの。あたしのためなの。1人でしようと思ったけど、お金もないし、葏忢さんが会ってくれる保証もなかった。だから」


「佐々木さんと瑞樹さんだけに協力させたって?綾に言われなかったか?“俺らも一緒に戦わせろ”って」


「…言われた。伝言でも頼んだの?」


「違えよ。おんなじこと思ってんだよ。俺も、綾も、チームの奴らも。お前の味方は佐々木さんや瑞樹さんだけじゃないだろ?俺らだってお前の味方だ」


味方?


貴女が味方ですって?


「それは、違うでしょう。



だって貴方は言ったもの。あたしに出て行けって」


「っ…!」


言っておきながら、自分でも驚いてしまった。


あれ、あたし。


許したはずなのに。


何故今更出てきたのかなんてあたしには分からなかった。


だけど、傷ついた心は簡単にはいえてくれないらしい。


「綾や翔、陽太が言うならまだ解る。あの子達はあの場にいたわけではないから、信じないのだって当然。でもあたしから居場所を奪っておいて、それを言ってはいけないのではないの?」


貴方は味方なのかもしれない。


でも、あたしは、あたしの心は。


貴方が裏切ったって、そう思ってるの。



「ごめん、でも、違う…」



その瞬間、プツンと何かが切れた。



「何が違うの!貴方が欲しかったのは、あたしじゃなくてマークの元恋人でしょ!」