「和佳菜さんはこの部屋を」
そう言われてやってきたのは、20畳ほどの広い洋室だった。
「こんなに広くなくても」
「いや、仁さんの大切な方ですから。…おふたり、付き合ってるんでしょう?」
「へ?」
「は?」
吉野さん、何を…。
「…吉野さんさ、思ってても口に出していいことと悪いことってありますよね?」
「…うっわ、吉野さん。やらかしたね」
付いてきたわけではないらしい真城さんが横を通った際に鼻で笑った。
「……ええ!若が連れてくる人なんて今まで居なかったんで、いや、その、ほ、本当すいませんっ」
「…期待通りの関係ではないですよ」
苦笑いをして言えたことはこれくらいだった。
あたしは口に出来ない。
まだ、言ってはいけないのだ。
マークのことが全て終わって、清算しないと。
誰も幸せになんか出来ない、
それくらいは分かっているから。
「…まあ、お前が俺の特別なことは事実だしな」
ぽつりと呟いたその言葉はあたしには聞こえなかった。



