「…なにがわかるんすか」
「お前言い方、ぎこちないんだよ。こういう職業してるんでね、人の行動には敏感なんだよ」
そう言った仁に対して、照史は薄く笑った。
「…へえ、若頭サマはなんでもお見通しなんですね」
「林っ…!」
「別にいいですよ?焦らなくったって。俺の目的はこいつを家に連れて帰ってくること。ここにそれ以上の用はないんで」
「行かせると思うか?」
「まあ、無理でしょーね。じゃあ今回はこれでいいです。居場所も分かったんで、これくらいにしときます。まあ、姉さん。18の誕生日には自分から帰ってくるでしょうから、あまり心配はしてないんですけどね」
「…馬鹿だな」
綾がぽつりと呟いた。
「は?何がですか?」
「これだから、世間知らずのお坊っちゃんは困るんだよ」
はあ、とため息までついてみせる。
「お前だって帰れねえに決まってるだろ。目の前でうちのオヒメサマを傷つけたんだからな」
ゾクリとするような獰猛的な目でそちらを睨む。
「あんた達こそ、何言ってるか、分かってる?うちはミズシマの人間だよ。俺がいなくなったって知ったら」
「その事実ごと、掻き消すだろうな」
続けて仁が言う。
低く。
ああ、まるであたしが出会ったあの日のような。
beast、野獣の声で。
「お前なんか最初から居なかったってことにしてやるよ。簡単なんだよ、うちはそれくらい余裕で出来る。分からねえなら、やって見せようか?今、ここで」
照史の目が大きく見開かれた。



