蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「…なにがわかるんすか」


「お前言い方、ぎこちないんだよ。こういう職業してるんでね、人の行動には敏感なんだよ」


そう言った仁に対して、照史は薄く笑った。


「…へえ、若頭サマはなんでもお見通しなんですね」


「林っ…!」


「別にいいですよ?焦らなくったって。俺の目的はこいつを家に連れて帰ってくること。ここにそれ以上の用はないんで」


「行かせると思うか?」


「まあ、無理でしょーね。じゃあ今回はこれでいいです。居場所も分かったんで、これくらいにしときます。まあ、姉さん。18の誕生日には自分から帰ってくるでしょうから、あまり心配はしてないんですけどね」


「…馬鹿だな」


綾がぽつりと呟いた。


「は?何がですか?」


「これだから、世間知らずのお坊っちゃんは困るんだよ」


はあ、とため息までついてみせる。



「お前だって帰れねえに決まってるだろ。目の前でうちのオヒメサマを傷つけたんだからな」


ゾクリとするような獰猛的な目でそちらを睨む。


「あんた達こそ、何言ってるか、分かってる?うちはミズシマの人間だよ。俺がいなくなったって知ったら」


「その事実ごと、掻き消すだろうな」


続けて仁が言う。


低く。


ああ、まるであたしが出会ったあの日のような。


beast、野獣の声で。



「お前なんか最初から居なかったってことにしてやるよ。簡単なんだよ、うちはそれくらい余裕で出来る。分からねえなら、やって見せようか?今、ここで」


照史の目が大きく見開かれた。