蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



え、あたし、泣いている…?


頬を触れば容赦無く涙は溢れていた。


自分の感覚まで鈍くなるなんて、馬鹿なのか、なんなのか。


前もこんなことがあったな、とふとぼんやり思った。


「和佳菜っ…」


あたしが突っ立って動けない代わりに、仁はあたしの元にやってきてくれて。


そっと周りからあたしを隠すように抱きしめてくれた。


暖かくて、頼もしい貴方は。


あたしを冷たい世界から守ってくれる。


「大丈夫だから、大丈夫」


そう背中を撫でてくれた。


「おい、お前」


そう言ったのは仁で。


そのとても低い声があたしまで震え上がらさせた。


大丈夫だから、と仁は再度あたしを撫でると。


とてつもない鋭い視線を、きっと、照史に向けたのだろう。


…あたしの視界には仁しかいないから、正確なことはわからないけれど。


「銀深会の組員のお前が、俺に喧嘩を売るとは上等だな」


「…は?売ってませんって、俺が用のあるのは和佳菜姉さんで」


「そうやって一度もそんな風に呼んだことねえくせに」


なんで、わかるの?


あたしそんなことを言ったことないでしょう?


照史の話だってしていないはずだ。