え、あたし、泣いている…?
頬を触れば容赦無く涙は溢れていた。
自分の感覚まで鈍くなるなんて、馬鹿なのか、なんなのか。
前もこんなことがあったな、とふとぼんやり思った。
「和佳菜っ…」
あたしが突っ立って動けない代わりに、仁はあたしの元にやってきてくれて。
そっと周りからあたしを隠すように抱きしめてくれた。
暖かくて、頼もしい貴方は。
あたしを冷たい世界から守ってくれる。
「大丈夫だから、大丈夫」
そう背中を撫でてくれた。
「おい、お前」
そう言ったのは仁で。
そのとても低い声があたしまで震え上がらさせた。
大丈夫だから、と仁は再度あたしを撫でると。
とてつもない鋭い視線を、きっと、照史に向けたのだろう。
…あたしの視界には仁しかいないから、正確なことはわからないけれど。
「銀深会の組員のお前が、俺に喧嘩を売るとは上等だな」
「…は?売ってませんって、俺が用のあるのは和佳菜姉さんで」
「そうやって一度もそんな風に呼んだことねえくせに」
なんで、わかるの?
あたしそんなことを言ったことないでしょう?
照史の話だってしていないはずだ。



