蒼の花と荒れる野獣Ⅱ




「仁……っ」


いこうとしたのよ、貴方の元に。


照史の一言が無ければ。


「へえ、姉さんってそういう顔するんだ」


足がすん、と止まってしまう。


なにを、言い出すの?


嫌な予感しかしない。


「知らなかったな。けど、姉さん。ダメですよ、恋愛しちゃ。姉さんはこれから結婚しなきゃいけないんだから」


やめて。


「結婚、だって?」


綾が訝しげにそういったのが聞こえた。


やめて。


「あれ、知りませんでしたか?姉さんは、18の誕生日に」




「やめてっ!」


本当に馬鹿みたい、あたし。


この人の前で叫ぶなんてあり得ない。


だけど、どうしてもどうしても。


嫌なの、絶対に。


帰らない、絶対に。


心臓がどくりどくりと嫌な音を立てて騒いでいる。


「…なあ、林。お前今誰の前で喋ってるか分かっとんの?」


吉野さんがそう照史に聞く。


「分かってますよ?若頭と支える綾さん。和佳菜がどんな立ち位置かも、だいたいは」


「いや、分かってとらんね」


「は?」


「だって分かってたら、若の前で和佳菜さんを泣かせるようなことをしないでしょう」