「仁……っ」
いこうとしたのよ、貴方の元に。
照史の一言が無ければ。
「へえ、姉さんってそういう顔するんだ」
足がすん、と止まってしまう。
なにを、言い出すの?
嫌な予感しかしない。
「知らなかったな。けど、姉さん。ダメですよ、恋愛しちゃ。姉さんはこれから結婚しなきゃいけないんだから」
やめて。
「結婚、だって?」
綾が訝しげにそういったのが聞こえた。
やめて。
「あれ、知りませんでしたか?姉さんは、18の誕生日に」
「やめてっ!」
本当に馬鹿みたい、あたし。
この人の前で叫ぶなんてあり得ない。
だけど、どうしてもどうしても。
嫌なの、絶対に。
帰らない、絶対に。
心臓がどくりどくりと嫌な音を立てて騒いでいる。
「…なあ、林。お前今誰の前で喋ってるか分かっとんの?」
吉野さんがそう照史に聞く。
「分かってますよ?若頭と支える綾さん。和佳菜がどんな立ち位置かも、だいたいは」
「いや、分かってとらんね」
「は?」
「だって分かってたら、若の前で和佳菜さんを泣かせるようなことをしないでしょう」



