マークは敵にすると面倒で。
だけどのこの従弟、林 照史は。
あたしの心を深く傷つける厄介者だ。
「…なんだ、ここにいたのか」
照史の小さな低い声に、ああやはり、と目を瞑った。
照史が大阪にいることは、イギリスにいた頃祖父から手紙をもらって知っていた。
千夏ちゃんとを助ける為だ、と思って乗り込んだ時は全く考えていなかったのに。
ああ、もしかしたら。
照史は祖父の命令でここに来たのかもしれない。
もう、か。
あたしの将来はあまりに儚い。
彼はそれから顔を上げて。
「探しましたよ、姉さん」
一度も呼んだことのない呼び名を呼んだ。
「うちの人間を使っても全く居所が掴めないから焦りましたよ。帰りましょう、おじいさまもとても心配されているんですよ」
どうせ、心配もしていない。
口だけなのは出会った頃と全く変わらない。
「…貴方にだけは会いたくなかった」
「なんでですか?舞花も心配してるんですよ。うちの母も、姉さんが連れ去られた時だって」
「ちょい待てよ、お前らどういう関係なんだよ」
綾が慌てている。
仁は慌てていると言うより、あたしから目を離さない。
事の端末を見守る、が正しい。
「すみません、和佳菜は俺の従姉なんです」
「へえ、お前んとこって」
「ミズシマの分家です。母が嫁いだので、名字は違うんですけど」
「和佳菜」
仁があたしの名前を呼んだ。
はっと顔をあげる。
「おいで」
柄にもなく泣きそうになった。



