蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



マークは敵にすると面倒で。


だけどのこの従弟、林 照史は。


あたしの心を深く傷つける厄介者だ。


「…なんだ、ここにいたのか」


照史の小さな低い声に、ああやはり、と目を瞑った。


照史が大阪にいることは、イギリスにいた頃祖父から手紙をもらって知っていた。


千夏ちゃんとを助ける為だ、と思って乗り込んだ時は全く考えていなかったのに。
ああ、もしかしたら。


照史は祖父の命令でここに来たのかもしれない。


もう、か。


あたしの将来はあまりに儚い。


彼はそれから顔を上げて。


「探しましたよ、姉さん」


一度も呼んだことのない呼び名を呼んだ。


「うちの人間を使っても全く居所が掴めないから焦りましたよ。帰りましょう、おじいさまもとても心配されているんですよ」


どうせ、心配もしていない。


口だけなのは出会った頃と全く変わらない。


「…貴方にだけは会いたくなかった」


「なんでですか?舞花(まいか)も心配してるんですよ。うちの母も、姉さんが連れ去られた時だって」


「ちょい待てよ、お前らどういう関係なんだよ」


綾が慌てている。


仁は慌てていると言うより、あたしから目を離さない。


事の端末を見守る、が正しい。


「すみません、和佳菜は俺の従姉なんです」


「へえ、お前んとこって」


「ミズシマの分家です。母が嫁いだので、名字は違うんですけど」


「和佳菜」


仁があたしの名前を呼んだ。


はっと顔をあげる。



「おいで」



柄にもなく泣きそうになった。