「すげえ寒いし、そろそろ入らねえか」
もう12月も半ば。
立ち話をするには寒すぎる気温だ。
綾の一声で、あたし達は関西本部に足を踏み入れることになった。
通されたのは大広間だった。
二十畳以上ありそうな大きな畳の間だ。
座布団を引いてもらって座っていく。
座布団の上に座るなんて、実家以来だ。
洋式で育ったあたしには、和式がなかなかしっくりこない。
「若は中学生ぶりですか」
「そうだな。綾は…」
「小学生の時に一度だけ。親父についてった時くらいだ。久々すぎて緊張しちまうよ」
「そうだな。吉野も真城も久々だし、挨拶しろよ」
隅に座る男の人がおずおずと顔を出す。
中性的な顔立ちをした、まだ高校生だろうか。
幼さが残る。
「俺は挨拶したんすけど…」
「それは和佳菜にだろ。綾も和佳菜もしばらくはここにいるんだから他にもなにしてるか知ってれば、なにかと楽だろ」
「ちょっと待って」
思わず仁の言葉を遮った。
「あたし直ぐに帰るつもりなんだけど」
それはタクシーの中で話をしながら考えていたことだった。
この時間からホテルを探すことは難しい。
だが、今日は確か平日だ。
新幹線の予約なら取れると踏んだ。
佐々木さんの病室に寄ってから、今日中には新幹線に乗りたい。
もう18時を過ぎた。
色々なことを考慮すればあと30分ほどでここを出なくてはいけない。
それがなんだ、しばらくここにいるって?
心が休まる気がしない。
今日は疲れた、とにかく1人になりたい。
「あたし、同居人がいて、今日帰るって言ったのだけど」
「あいつになら連絡しとくけど」
「佐々木さんにもなにも言っていないし…」
「なんだ、和佳菜。帰りたいのか?」
その言葉にびくりと肩が震えた。



