蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



喧嘩なんて、見たことがなかった。


マークの側にいてもこんなことはなかったから。


見えない所で、あたしが怖い思いをしないように。


だから、この破裂音が、爆破音が、骨が折れるような音が、怖くて堪らない。


「目ぇ瞑ってろ」


小さく震えたのが、見えたのだろうか。


貴方が小さく微笑んで、隠すように守ってくれた。


だけど決着など、あたしが目を瞑る暇もなくついた。


部下も何人も入ってきたのに、気がつけば彼らはみな倒れ、葏忢は羽交い締めにされていた。


「…俺は手加減なんかしねえ。上に立って、自分の力を使わずにのうのうと生きるあんたに、負けるなんて初めから思ってねえだけだ」


仁がぐっと力を入れたのか、葏忢さんは小さく唸った。


だけどくっと笑って。



「舐めとるわ」


笑った顔に動揺したのか。


仁は乱暴に払い落とされ、誰も味方の付いていなかったあたしの頭に。


「ほんと、ええ気分」


拳銃の銃口を押し当てた。



「和佳菜!」


仁の焦った顔が目に映る。


「…そのおじょーさんが、俺らにあんなことしなきゃ、こんな目にも合わんかったのにな」


ケタケタとさぞ楽しげに笑う葏忢は、趣味が悪くて、気持ちも悪い。


だけど大丈夫、あたしは怖いなんて思わない。


どうやら貴方はお忘れのようだけど。


「貴方がたは、あたしのせいだって言いたいようだけど、それは違うわ」


あたしがマークの側にいて、なにをしていたか、分かっている?


「は?」


あたしはね。


「全部自分のせいなのよ」


人の行動を意のままに操るのが得意なの。